内容説明
国際関係を権力闘争に還元する見方も、「悪」の侵略国に対する「善」なる制裁という見方も説得力を失った。合衆国における戦争違法化思想をトータルに跡づけ、忘却された戦間期のラディカルな展開を再考することで、国際秩序の新たな可能性を探る。
目次
アメリカにおける戦争違法化思想―否定から再評価へ
第1部 一九世紀~二〇世紀転換期―アメリカにおける戦争違法化思想の発展(黎明期のアメリカ平和運動―「世界最高裁」の夢;第一次世界大戦―「平和の強制」の観念の浮上)
第2部 一九二〇年代―国際連盟とアメリカの戦争違法化思想の競合(サーモン・O.レヴィンソンの戦争違法化思想;パリ不戦条約―「強制によらない平和」の追求)
第3部 一九三〇年代~第二次世界大戦―戦争違法化思想の危機(危機の時代の戦争違法化思想;戦争違法化思想の否定・忘却;今日の世界と戦争違法化思想)
著者等紹介
三牧聖子[ミマキセイコ]
1981年東京都に生まれる。2003年東京大学教養学部卒業。2012年東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程修了。現在、日本学術振興会特別研究員(PD)、博士(学術)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
261bei
0
19世紀から戦間期のアメリカの平和運動は、連邦最高裁を範とし、道義的制裁によって実効性を担保する国際法廷の創設を訴えていた。それが第一次大戦を承けて平和の強制のための実力を持つことを訴える流派と、本書の主人公であるサーモン・レヴィンソンのように軍事制裁を批判し続けた人とに分離する。レヴィンソンの思想は、帝国主義や敗戦国ドイツの苦難を等閑視し、モンロー・ドクトリンを例外として疑わないものだったが、30年代にファシストの挑戦を受けた彼らは、「現実主義」に目覚め、戦争原因への働きかけという論点に到達する。2024/12/31