内容説明
日本植民地帝国はどのように崩壊したか。日本帝国50年の歴史を通じて形成された植民地経済の構造と特質をふまえて、その最後の姿となった「大東亜共栄圏」の全容を初めて客観的に描き出す。マクロ的数量データをもとに、交易や金融の実証的分析から、アジア各地に大きな影響を及ぼした円域経済の実態を捉えた、必読の成果。
目次
第1部 「日本植民地帝国」論(日本植民地帝国の展開と構造;近代日本帝国における植民地支配の特質;日本植民地統治における「同化主義」の構造)
第2部 「大東亜共栄圏」論(「大東亜共栄圏」構想とその構造―「大東亜建設審議会」答申を中心に;「大東亜共栄圏」交易論;「大東亜共栄圏」と日本の対外収支;「大東亜共栄圏」論)
第3部 「南方共栄圏」論(「南方圏」交易論―市場から資源へ貿易から交易へ;「南方圏」国民所得の推計について―解題・高橋泰蔵『南方経済に於ける国民所得の推算に関する一資料』)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shin
8
何故か会社の上司に薦められて読む。今年の初めに読んだ小熊英二『日本単一民族神話の起源』が非常に知的興味を刺激してくれたので、トピックとして重なる同化政策論の部分は興味深く読めたが、戦時国際金融を取り扱った後半部分については背景知識も乏しくて難しかった。基本的に数量的な歴史記述は好むところなのだけれど、それを大東亜戦争に当てはめると、画餅そのものの戦争計画とそれを研究することの二重の虚しさが感じられて徒労感のようなものが残る。全体的に分析も記述も概論の域を出ないので、類書で補足しないと消化不良の感あり。2011/12/25
kozawa
2
大東亜共栄圏の経済実態はまだ解明途上。 この途上の解明でも大東亜共栄圏が「後付け」で「収奪前提」でデタラメなものだったことが明らかになる。 それを単に「収奪」という言葉で片付けずに真摯に実態に向き合おうとする研究。2022/01/20