出版社内容情報
平安朝の袖はなぜこれほど涙に濡れているのか? 『古今集』から『新古今集』
にいたる八大和歌集を、<袖の涙>のメタファーを軸に、イメージの連鎖・言葉
のネットワークの展開過程をつぶさに辿ることによって読み解き、<涙>のメタ
喩的な役割と日本の王朝文化における詩的言語の卓越した位置を明らかにした労作。
目次:
はじめに// <袖の涙>の根源とその彼方へ(「涙」/「泣き」/「袖」/平安
文化の<流れ>の構造/続・「袖」)// 詩的言語における<袖の涙> 古今和
歌集(「涙」/「袖」/<袖の涙>の詩化過程と古今集の構造/<袖の涙>の詩語
/袖書草紙Ⅰ/追歌 「涙の歌人」の伊勢) 後撰和歌集(差異づけられた反復と
しての重出――<紅にうつる涙の色>/詩化過程の伝播――「涙の川」と「涙川」
/和歌制作の<知るべ>としての<袖の涙>の表現/歌の配列/袖書草紙Ⅱ/追歌
貫之vs伊勢) 拾遺和歌集(“権威ある”詩語との接続/<袖の涙>の詩化過程を
書き印す<袖の露けさ>/<袖の涙>の詩化過程の物語/袖書草紙Ⅲ) 後拾遺和
歌集(<袖の涙>のコード合わせ/世の中の転換期を書き印す<袖の涙>/<袖の
涙>の意味作用の転換期/<つきぬ涙>を求めて/<袖の涙>のゲーム/袖書草紙
Ⅳ) 金葉和歌集(<名を流す涙川>/<あまる涙のしづく>/<たがふ涙なりけ
り>/<あやしきまでも濡るる袖>/<うらみて袖濡る>/<知らず/知らす>を
「おりつる袖」/<袂にやどる月>/<七夕の涙の色>/<紅の涙にそむるもの>
/袖書草紙Ⅴ) 詞花和歌集(四季の歌 「虫おもふこころ」/別歌 「関」の“よ
そ”の意味/恋歌 「落つる涙」の色々/雑歌 「いにしへを恋ふる涙」/袖書草紙
Ⅵ) 千載和歌集(「涙」の<置き添へ>の構造/詩的伝統の“重ね”を書き印す
<袖の涙>/<濡るる袖>に映る詩的言語の展開/「袖」に包まれた「涙」の意味
/袖書草紙Ⅶ) 新古今和歌集(新古今集初出の<袖の涙>の歌語/差異化=再異
化としての<袖の涙>の伝統的な詩語の再解釈/<袖の涙>のメタ詩的機能A――
詩的伝統の流れを書き印す<袖の涙>/<袖の涙>のメタ詩的機能B――世の中を
書き徴す<袖の涙>)// 王朝文学を書き徴す<袖の涙>(<水茎の跡>を書き
徴す<袖の涙>/<袖の墨>/<袖の涙>を言問う)
内容説明
平安朝の袖はなぜ涙に濡れているのか?『古今集』から『新古今集』にいたる八代集を、“袖の涙”のメタファーを軸に、イメージの連鎖・言葉のネットワークの展開過程を辿ることによって読み解き、“涙”のメタ喩的な役割と王朝文化における詩的言語の卓越した位置を明らかにする。
目次
“袖の涙”の根源とその彼方へ
詩的言語における“袖の涙”(古今和歌集;後撰和歌集;拾遺和歌集;後拾遺和歌集;金葉和歌集;詞花和歌集;千載和歌集;新古今和歌集)
王朝文学を書き徴す“袖の涙”
著者等紹介
クリステワ,ツベタナ[Kristeva,Tzvetana]
1954年ソフィア(ブルガリア)生まれ。1978年モスクワ大学アジア・アフリカ研究所日本文学科卒業。1980-81年東京大学文学部国語・国文学科研究生。1984年ソフィア大学文学博士、ソフィア大学東洋語・東洋文化センター日本学科主任教授、中京女子大学教授等を経て、現在東京大学大学院人文社会系研究科客員教授。著書に『水茎の跡』(ブルガリア語、ソフィア大学出版会、1994)、他に『とはずがたり』『枕草子』のブルガリア語訳等もある
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