出版社内容情報
1956年のスエズ侵略戦争を中心テーマに、第二次世界大戦後のイギリスの
中東政策の展開過程とアラブ・ナショナリズムとの関係、イギリスとエジプト
との対立の深化とスエズ戦争への政治過程、中東政策ならびにスエズ戦争をめ
ぐる英米関係の展開とイギリスの凋落過程を歴史的に考察する。
目次:
序 章 植民地主義・ナショナリズム・冷戦/第1章 イギリスの世界政策と
中東/第2章 イランの石油とエジプトの基地/第3章 バグダッド条約とア
ラブ・ナショナリズム/第4章 スエズの危機と戦争/第5章 戦争と侵略の
代償/終 章 イギリス帝国とスエズ戦争
内容説明
石油と基地、ダムと運河の政治外交。なぜイギリスは共謀したか?なぜアメリカは裏切ったか。
目次
序章 植民地主義・ナショナリズム・冷戦
第1章 イギリスの世界政策と中東
第2章 イランの石油とエジプトの基地
第3章 バグダッド条約とアラブ・ナショナリズム
第4章 スエズの危機と戦争
第5章 戦争と侵略の代償
終章 イギリス帝国とスエズ戦争
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MUNEKAZ
7
いわゆるスエズ危機に至る道程を、イランの石油会社国有化、バグダッド条約締結と結びつけて鮮やかに論じる。植民地主義を「冷戦の論理」に読みかえて帝国の維持を図るイギリスと、反植民地主義をとるアメリカの角逐。バグダッド条約から政治的なメッセージを読み取り、スエズ運河国有化へ踏み切るナセルの決断など読みどころが多く大変面白い。あとからすればイギリスはなぜこんな「陰謀」に乗ったのだろうかと思うが、それが財政・軍事の「弱さ」故に無茶をせざる得なかったのだとしたら、戦前日本の侵略とも相通ずるところもあるかもしれない。2020/05/17
人生ゴルディアス
3
大変面白かった。スエズ動乱についての基礎知識はなく、エジプトのナセルは西側の敵で極悪人という印象だけがあったが、全然違った。すべてブリカスが悪い。今の視点から見るとナセルはほとんど当たり前のことを言っているように見える。東側陣営から武器を調達したのはイスラエルに侵攻されそうなのに西側が手を差し伸べなかったからだし、ブリカスはスエズにおいて正当な分け前をエジプトに共有していなかったように見える。というか英仏がエジプトを直接攻撃したらあれだけから、先にイスラエルけしかけるとか野蛮すぎる。2024/11/19
蟹
2
日本では「第二次中東戦争」とも呼ばれる、いわゆる「スエズ危機」について、その起源から説き起こす。歴史上、ここまで清々しい「陰謀」もそうそうないだろうし、無残な失敗ではある。しかしこの事件がそれだけにとどまらない意義を持つことがよく分かった。あと、あくまで「経済的理由・実現性から」アスワン・ハイ・ダム援助を打ち切る英米と、これを政治的な判断と見てスエズ運河国有化を決心するナセル、完全に最近見たやつでは…2020/04/02
ワッキー提督
1
冷戦、脱植民地化、英米関係そしてパレスチナ問題が複雑にクロスした事例であるスエズ戦争を詳細に研究している。ついつい単純化されやすい「判断ミス」の要因について丁寧に分析し、かつこの結末が必ずしも確実ではなかったことを示している。冷戦とイギリス「帝国」の関係を見ていく上で避けては通れない一冊。2017/08/17
葉
1
スエズ戦争の概略図として、フランスからマルタ島、ポートサイドに続いている。イギリスの世界政策として、ランプソンの恐喝事件から地中海への戦略的連絡路の意義、AIOCを通じていらんの石油利権を掌握していることなど、イギリスが世界の大国として生き残るためには中東と地中海における地位を維持することが不可欠であったとしている。イーデン内閣の問題として政策決定過程の非民主性と外交政策決定のイーデンの役割の突出などが挙げられており、帝国にプラスに働かなかったことが挙げられている。2014/11/22