出版社内容情報
天文、時間、芸術、経済、戦争……
人類史を動かし、この世界を変えたきたのは、いつだって「数学」だった
数学には、世界を変える力があります。
少し大げさに聞こえるかもしれません。しかし歴史を振り返ると、世界の見え方が変わった瞬間には、いつも数学がありました。
たとえば、ヨーロッパでは古代から中世にかけて長いあいだ、「地球は動かず、天体がその周りを回っている」という天動説が信じられていました。ところが16世紀、コペルニクスが「地動説」を提唱します。その後、ガリレオ・ガリレイやヨハネス・ケプラーらの研究によって、この考えは次第に確かなものになっていきました。ここで重要な役割を果たしたのが、天体の動きを記述する数学でした。数学は、宇宙の姿そのものを書き換えたのです。
航海の歴史にも、数学の力を見ることができます。かつて遠洋航海は非常に危険なものでした。自分が今どこにいるのか、どちらに進めばよいのかを正確に知る手段が限られていたからです。しかし天体観測や三角法、測量技術が発達し、数学によって位置や進路を計算できるようになると状況は一変します。長距離航海が可能となり、大航海時代が幕を開けました。新しい大陸が発見され、世界地図は大きく塗り替えられていきます。数学が、文字どおり世界を広げたのです。
こうした例は、決して特別なものではありません。天文、時間、航海、芸術、政治、経済、戦争――。人類の歴史を動かしてきた多くの発明や発見の背後には、必ずといっていいほど数学が存在しています。
本書では、そうした人類の叡智のなかに潜む数学に焦点を当て、歴史の転換点をたどっていきます。古代から現代まで、人々はどのように世界を理解し、社会を発展させ、暮らしを豊かにしてきたのか。その裏側には、どのような数学があったのか。ときには争いを生み出してしまった背景にも目を向けながら、その物語を紹介していきます。
本書を通して、数学という学問のロマンや魅力の一端を感じていただけたなら、著者としてこれほどうれしいことはありません。数学が好きな人も、苦手な人も、「何の役に立つのだろう」と思っている人も、どうぞ安心して読み進めてください。
そして読み終えたとき、世界がこれまでより少しだけ面白く見えている――。そんな一冊になればと願っています。
【目次】
はじめに 歴史の転換点には数学がいる
第1章 「数学」はどのように生み出されたのか
・「万物は数なり」──ピタゴラスは世界をどう見ていたのか
・「数」がない時代──人びとはどのように暮らしていたのか
・「数える」が文明に革命を起こした
・「ゼロ」が科学から思想まで、世界の常識を一変させた
・さまざまな「記号」が数学を普及させて世界を発展させた
・「数式」が数学だけでなく科学全般を発展させた
第2章「時間」と「天文」を捉えた数学
・自然という書物は数学の言葉で書かれている──ガリレオは世界をどう変えたのか
・時間のはじまり──月と太陽を見つめ「より正確な暦」を作った古代メソポタミア
・星の動きへの関心──「天動説」の影で解像度を上げて行く「地動説」
・近代科学の眼差しは、より正確な時間の定義へと向けられる
第3章 地球の姿を解明した数学
・初めて地球の大きさを測ったエラトステネスの測量
・古代エジプト文明を発展させた「測る」技術
・大航海時代の始まりにあった「地動説(地球球体説)」への誤解
・地図の「使いやすさ」と「正確さ」を統合させた「メルカトル図法」
・江戸時代に世界最高レベルの地図を作成した伊能忠敬
・世界共通の単位で「測る」を可能にした数学
第4章 「美しさ」は数学でできている
・「美しさ」とは何なのか──この世界を鑑賞するための「数学的な美しがり方」
・芸術の探求と「美しさ」の理論化は併走してきた
・古代数学の「内外比」はなぜ現代の美の基準「黄金比」となったのか
・「ルネサンス」は芸術と数学のリスタートとなった
・日本の伝統デザインに隠された数学的要素
第5章 繁栄と格差を生みだした数学
・「数学は、結局、何の役に立つの?」──数学はなぜ必要とされたのか
・権力が必要とした数学と「数学の民主化」を実現した人びと
・貨幣の「単位」が社会を変え商人たちを古い権力から独立させた
・確率論が生んだ「合理性」で未来の予測が可能になった
第6章 戦争は数学を求める
・「戦争の要請」に数学は応えてきた
・戦争における暗号の発展と数学の関わり
・ナポレオンは数学で戦争の姿を変えた
・「戦争に勝つ」ための戦略が、戦後はビジネスの戦略として注目



