出版社内容情報
私たちのまわりに育つ植物は静かに暮らしているように見えます。でも、植物が生きていくためには、栄養をつくるために必要な光、根を生やせる土地、吸収する水や養分が必要です。新しい植物がその場所に侵入してくれば、自分たちの暮らしが脅かされるので、自分たちの静かな暮らしを守るために、侵入してきた植物と闘わねばなりません。自分が新しい生育地を獲得するために、離れた場所に移動すれば、そこにすでに育っている植物たちと闘わなければなりませんから、発芽した芽や根には、戦う力がなければなりません。生育する場所が獲得できても、夏の暑さや冬の寒さとは毎年、闘わなければなりません。夏には紫外線や灼熱の太陽の強い光に耐えねばなりません。動物に食べ尽くされない工夫も凝らさなければなりません。人間とも共存、共生しなければなりません。人間は、必要な植物なら共存共生し、大切にしますが、必要ない植物にはひどい仕打ちで、その場から追い払おうとするからです。静かに暮らしているように見える植物たちも、すさまじい生存競争に打ち勝つための力を隠しもっているのです。植物たちは、自分が生き残り、子孫を残すために、自分の力を秘め、知恵をめぐらせ、さまざまな工夫を凝らしているのです。
内容説明
「植物」のイメージは「平和そう」「のんびり」「きれい」「おとなしい」「癒やされる」といったものかもしれません。しかし、その世界に一歩踏み込んでみれば、そこでは日夜、すさまじい生存競争が繰り広げられています。静かに暮らしているように見える植物たちは、自分が生き残り、子孫を残すために「知恵」をめぐらせ、考え抜かれた工夫を凝らしているのです。本書では、動きまわらずに生きる植物に秘められた「生き残るための力」を解説します。
目次
第1章 枯れ滅びないための戦い(「光」を手に入れる;「生育場所」を手に入れる;「水」や「養分」を手に入れる)
第2章 厳しい気候からからだを守る戦い(紫外線からからだを守る;「暑さ」「寒さ」からからだを守る)
第3章 「食べられる宿命」との戦い(食べにくい姿、食べられても平気な姿になる;「食べたい」と思わせない「武器」をもつ;食べにくる虫を「香り」で追い払う)
第4章 「虫」を誘うための戦い(花の「魅力」を競う;小さな花を「大きく見せる」テクニック;手段を問わず「形」や「色香」で誘う)
第5章 「生き残る」ための戦い(「タネ以外の方法」で増える;養分を土から得ずに生き残る;「変わった葉っぱ」で生き残る;「光合成」に頼らないで生き残る;きれいな花を「咲かせずに」生き残る)
著者等紹介
田中修[タナカオサム]
1947年、京都府生まれ。京都大学農学部卒業、京都大学農学研究科博士課程修了。その後、スミソニアン研究所博士研究員、甲南大学理工学部教授などを経て、甲南大学特別客員教授・名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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