出版社内容情報
日本の伝統的文化の型に方法論的ツールを見出し、科学で扱いきれない問題を処理するための手段として用い総合学に至る可能性を探る。
内容説明
日本の伝統的な武道、医療、伝統的な舞台芸術、文化にはさまざまな「型」がある。しかし、西洋的な科学的方法論の台頭により明治以降にそれらの型の多くはわたしたちの日常から失われた。科学と武道・伝統医学の双方に通じる著者は、その中で現代に生きるものの再生を試みる。科学的方法論との詳細な比較によって、科学では扱いきれない主題や対象を処理するための新たな方法論的ツールとして定式化し、総合学へ統合する可能性を探る。
目次
序章 なぜいま型なのか
第1章 武道の型と特徴―心身の修錬と叡知の獲得
第2章 漢方の型と特徴―証と方剤の照応に見る叡智
第3章 科学的方法論と型的方法論
第4章 型が表現・伝達する叡智の質―把握・発露・現在
第5章 人間や生命にアプローチする型―易経・生命科学
第6章 イノベーションや創造力にアプローチする型―デザイン思考・アート思考
結 型が切り拓く可能性
著者等紹介
大庭良介[オオニワリョウスケ]
1977年東京都に生まれる。2000年京都大学総合人間学部卒業。2006年京都大学大学院生命科学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、筑波大学医学医療系准教授、博士(生命科学)。健康情報総合学研究室主宰、居合道六段、空手道四段、剣道二段(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
無重力蜜柑
11
かなり独創的。あまり類例はない本だが、自分は科学論の一種として読んだ。科学は知の伝達、習得の方法として現代で圧倒的な勢力を誇る。しかし、それでは取りこぼす対象が存在する。そうした対象に有効なオルタナティブな方法論として筆者が提唱するのが「型」だ。それは「特定の叡智を内在するパッケージ」だが、科学と違って「非分析的な把握と伝達の手段」であり、「要素間の関係性に分解すると価値を失う」ものだ。つまり理論の客観的理解ではなく方法の主観的内面化により、叡智を丸ごとインストールして「使える」ようにする方法である。2024/05/31
桧山
1
型とはなんぞや、てのを知りたかったんだが、武道や漢方の記載が多く読むのをやめた。型とは言語化できないもの、て定義なので内容としてはあってるんだろうが読んでて楽しくなかった。2025/08/02
takao
1
ふむ2022/05/15
Go Extreme
1
なぜいま型なのか: 型が拓く事物へのアプローチの可能性 武道の型と特徴: 統合的に身体知を把握する 型の叡智の習得 武道への視線 漢方の型と特徴: 型としての漢方 科学的方法論と型的方法論: 主観性と客観性 反証性、反駁性、テスト可能性 科学と非科学・疑似科学 型が表現・伝達する叡智の質: 把握と理解 発露と推論 今この瞬間を大切にする型 科学・理解と推論 人間や生命にアプローチする型: 人間・生命への型によるアプローチ 生命科学研究の半世紀 イノベーションや創造力にアプローチする型 型が切り拓く可能性2021/10/05
にじー
1
京都大学総合人間学部はどんな学問をしているのか傍目にはわからなかった。本書を読んで、その一端を垣間見た。学問だけでなく武道活動を通じて得られた考察が述べられている。武道の「型」説明においては、大庭氏自身がモデルとなり連続写真を掲載している点も良い。自然科学だけでなく、ビジネス分野で注目されているデザイン思考やアート思考をも考察して、科学的アプローチと「型」アプローチが相互補完できると言う論旨に納得した。しかし、「型」を稽古した身体感覚がないと、大庭氏の主張を理解するのは難しいだろう。2021/09/01