出版社内容情報
しつこくねだるうえに感謝しない! ねだりで継続するケニア北西部トゥルカナ人の社会は、私達の贈与や恥の感覚をくつがえす。
内容説明
すべては“あなた”と“わたし”が決める!ケニア北西部に住むトゥルカナ人―日本人なら規則や組織の論理に従って決める問題を、彼らは「対面的な交渉」によってすべて解決する。ともに納得できる決着を実現することに、誰もが全身全霊で打ち込む社会。彼らの誇り高い生き方は、自分に自身をもてない私たちをゆさぶる。私たちの「贈与」「互酬」「恥」の感覚をくつがえす強烈な交渉と「ねだり」の攻勢には、「こちらの事情も察してくれ」という甘えは通用しない。しなやかに、しぶとく、いさぎよく―臨機応変のコミュニケーションによって関係を紡ぐ人びと。『生態人類学は挑む』MONOGRAPH第1巻は、眩暈がするような交渉に生を賭ける人びとの社会を描き出す。
目次
序章
第1章 トゥルカナの社会と歴史
第2章 家畜の分類と個体識別
第3章 家畜の贈与と交換
第4章 家畜に対する権利
第5章 婚資の交渉
第6章 「ねだり」と対面的な相互交渉
終章
著者等紹介
太田至[オオタイタル]
京都大学名誉教授。京都大学大学院理学研究科修了、理学博士。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授、京都大学アフリカ地域研究資料センター長などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sayan
26
「ねだり」と「物乞い」に普く社会の反応は否定的だ。それは「恥も外見も無い、すべきではない」と表現される。さて本書、東アフリカ牧畜民を追う。ここでは上記の社会規範は意味をなさない。ねだりと物乞いは、正当な権利を行使する交渉手段として成立する。だから「食べ物をくれ。なぜくれない?」と贈与する側が「詰問」される。著者も言う「所有の概念が崩れていく」と。一見全てが利己であるこの民に互助、連帯の意識はないのか疑問に思う。それは本書4~6章を通じて応答してくれる。そして、本書タイトル「交渉に生を賭ける」が腹落ちする。2021/06/05
いとう・しんご
3
ぽんこぶんこさんの投稿を見て面白そう・・・と読んだけど、これまたビックリの拾いもの!持続可能な社会があるとしたら、この本に描かれているような大阪のおばちゃん的世界、つまり、「おねだり」を起点に交渉を重ね、ボケとツッコミの応報のなかで、社会的紐帯を作り出していく・・・そういう社会しかないのではないか、という本。ぜったい面白いです。2021/11/05