内容説明
現実政治を改革する古典解釈学の精神。「正しさ」の根拠とは何なのか。他者はいかに説得すべきなのか。「孟子の再来」たちはこの答えを古典に求め、論争と党争を繰り広げた。
目次
第1部 思想形成としての古典解釈(孔孟一致論の展開と朱熹の位置―性論を中心として;経書解釈から見た胡宏の位置―「未發・巳發」をめぐって)
第2部 道学者の思想と政治姿勢(陳亮の「事功思想」と孟子解釈;淳煕の党争下での陸九淵の政治的立場―「荊國王文公祠堂記」をめぐって;説得術としての陸九淵の「本心」論―仏教批判と朱陸論争をめぐって;消えた「格物致知」の行方―朱熹「戊申封事」と「十六字心法」をめぐって)
第3部 政治から歴史世界へ(『資治通鑑綱目』と朱熹の春秋学について―義例説と直書の筆法を中心として)
著者等紹介
福谷彬[フクタニアキラ]
1987年東京都生まれ。2016年京都大学大学院文学研究科博士。後期課程指導認定退学(中国哲学史専修)。京都大学博士(文学)。日本学術振興会特別研究員を経て、現在は京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター助教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きさらぎ
6
「孔孟の教え」と言われるほどの孟子尊崇は、漢代から宋代にかけて形成された。中国の書物分類において、諸子百家の書「子」儒家経典の「経」に格上げされた書は『孟子』のみであるという。本書は孔孟一致論の形成過程を個別の論者において分析し、その到達点を孔孟を理論と実践として全体を包摂する朱熹の思想体系にみる。また宋学内での朱熹と陳亮・陸九淵らの違いを書簡や論争から分析し、その違いを生んだ彼らの根底にある考え・政治との関わり方・性格の問題などとから読み解くなど、儒者たちの個性や時代状況が浮かび上がってくるのが刺激的。2019/09/22
あお
2
朱子学を生んだ道学の概観を、これまでの様に「朱子学から」検討するのではなく、同時代の他の道学諸派も交えて「道学者」「道学グループ」と呼ばれる人々の思想を再構築していこう、と言う試みは新鮮で、筆運びも軽快ということもあり読みやすかった。2019/07/20