出版社内容情報
遊牧民との抗争、痩せた土地での農耕、酒と土器の経済がつくりだす均衡と身分制度――。いろいろあっても毎日が宴会! どうしてこの村は「不平等」の一歩手前でとどまっていられるのか。人類が平等から不平等社会へ跨ぎ越す瞬間を探し求めてきた人類学。跨ぎ越してしまった「近代」の別の可能性として現れたコンソ社会に暮らし、彼らの生活を記録した人類学者が、不平等の起源に迫る。
内容説明
主食はビール!エチオピアの山上の村、人類学者が出会ったのはほろ酔いで勤勉で、とってもケチな人々―。貧富の差が生まれる近代社会以前の姿をとどめる、コンソ民族誌の集大成。
目次
第1章 山の上に住む、ほろ酔いの人びと
第2章 畑の中の墓標
第3章 不毛の大地を耕し段々畑を作る
第4章 屋根の上の土器
第5章 土器と市場の生態学
第6章 土器と織物の村―分業は不平等社会への橋渡しとなるか
著者等紹介
篠原徹[シノハラトオル]
1945年中国長春市生まれ。民俗学者。京都大学理学部植物学科、同大学文学部史学科卒業。専攻は民俗学、生態人類学。国立歴史民俗博物館教授を経て、2019年3月まで滋賀県立琵琶湖博物館館長。従来の民俗学にはなかった漁や農に生きる人々の「技能」や自然に対する知識の総体である「自然知」に目を向ける(「人と自然の関係をめぐる民俗学的研究」)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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魚京童!
17
人間の限界。なんで働くんだろうね。みんなお酒を飲んで幸せにやっていけばいいのに。ずっとお酒を飲んでいたら、幸せではないのかな。機械がビールを作り、ただ消費するだけ。素晴らしい新世界だ。目的なんてないのだから、2019/04/14
kuukazoo
16
『酒をたべる』のデラシャの近くに住むコンソもチャガというビール(5%)が主食。チャガは一回で大量に作るが保存できないのでお食事時にはその日チャガのある家に村人が集まり「買って」飲むという共食が日常である。山の頂上の集落に密集して住みプライバシーはゼロ。斜面に畑を拓き土器作りは女性、機織りは男性がやる。また金銭感覚が発達している(つまりケチ)。コンソは農耕社会だが「余剰や富の蓄積→支配被支配構造」になっていないことの考察は興味深い。潜在的にライトな相互監視社会的な要素が大きいかもというのは複雑な気分である。2024/03/17
jackbdc
7
エチオピアのサウガメ地区という高地民族の村のフィールドワーク記。新石器時代を思わせる生活様式。粗末な道具による農耕と土器や酒を市場で商いする弥生時代のような生活。蓄財できる余剰が存在しておらず社会に階級制が育っていない。なぜなのか。確かに僻地性はあるが、物理的に他所の世界と絶対的な隔絶があるわけではない。選択の産物ではないか?消極的かもしれないが。茨木のり子の詩「六月」の引用が面白い。景色が綺麗で仕事終わりに皆で酒を飲む理想の村に小さな喧嘩が絶えない風情を見出す。さて、サウガメの詩人はどんな詩を書くのか?2021/04/29
🤩🤩🤩
0
山を切り開いたような集落で住民達は日々農耕や土器作りに勤しみ、皆で酒を分かち合い暮らす…と言うと、まるで物語の中の自然とともに牧歌的に呑気に暮らす民族かのような印象を受けるが、実際には山頂から麓、空き地に生える草一本に至るまで徹底的に生態管理された環境が構築されており、その社会システムも全てが噛み合いひとつの『平等』を実現していた…という内容。面白い。2024/06/22
Arte
0
山の上に密集して住み、朝食以外の食事は酒なアフリカの部族の話。1000mの石だらけの山を切り崩して、石垣で区切られた畑を作って混植するとか、糸を紡ぐのも布を織るのも服を作るのも男の仕事で、女がはくのは二段ギャザースカートとか、酒は一気に作ってすぐに飲まないといけないので、作った家にみんなで行って、小銭を払って廻し飲みするとか、システムが綺麗に出来上がってる感が凄い。2023/12/18
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- めんぱに~(1)