出版社内容情報
日本の生態人類学創始者。アフリカ焼畑農耕民の生業の知恵や呪医の世界を通して自然と人の交わりに迫った。彼の提唱した「最小生計努力」や「平準化機構」はアフリカ社会を理解する基本概念として幅広い分野で援用されている。1巻には日本の農山漁村やアフリカの未踏の原野を舞台に花開く生態人類学の諸相を収録。全3巻。
内容説明
アフリカの焼畑農耕民社会を対象とし、自然・社会・文化の相互関係と動態を生態人類学の立場から解明してきた京都大学名誉教授・掛谷誠の著作集。日本をフィールドにした初期の研究も含め、その業績を集大成。第1巻は日本の山村と島嶼を皮切りに、アフリカのトングウェやベンバの農村社会へフィールドを拡げ、生態人類学の基礎を築いていった著者の足跡をつまびらかにする。
目次
第1部 日本の離島と山村に生きる(小離島住民の生活の比較研究―トカラ列島、平島・悪石島;雪国の山村における戦後三〇年―福井県瀬戸部落(福井県南条郡今庄町瀬戸)(現在の福井県南条郡南越前町瀬戸)
「白神山地ブナ帯域における基層文化の生態史的研究」の目的と構成
生態史と文明史の交錯―白神山地における自然と生活の生態史をめぐる諸問題)
第2部 トングウェの暮らしと自然(トングウェ族の生計維持機構―生活環境・生業・食生活;アフリカのトングウェ族とともに;サブシステンス・社会・超自然的世界―トングウェ族の場合;伝統的農耕民の生活構造―トングウェを中心として)
第3部 ベンバの伝統生活と変化(ザンビアにおける生態人類学研究上の諸問題―予備調査報告;ザンビアの伝統農耕とその現在―ベンバ族のチテメネ・システムの現況;中南部アフリカ・疎林帯におけるベンバ族の焼畑農耕―チテメネ・システムの諸相;ベンハ族;焼畑農耕社会の現在―ベンバの村の一〇年)
第4部 生態人類学とアフリカ農耕民研究(環境の社会化の諸相;焼畑農耕民の生き方;アフリカ農耕民研究と生態人類学)
著者等紹介
掛谷誠[カケヤマコト]
京都大学名誉教授。1945年生まれ。理学博士。1968年京都大学理学部を卒業し、同大学大学院理学研究科に入学して生態人類学を学ぶ。1974年に福井大学教育学部助教授、1979年に筑波大学歴史・人類学系助教授、1987年に弘前大学人文学部教授を歴任し、1990年には京都大学アフリカ地域研究センター教授、1998年からは同大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授を兼任した。2008年には定年により退職し、2013年12月22日に逝去した。享年68歳であった。日本における生態人類学の創始者のひとりであり、東アフリカ乾燥疎開林帯の農耕民社会に関する研究によって優れた業績を残した。生態人類学会の会長や日本アフリカ学会の理事などを歴任すると同時に、京都大学アフリカ地域研究資料センター長や同大学評議員の要職を務めるなど、学界の組織化や体制の確立に尽力し、1998年には大同生命地球研究奨励賞を受賞した。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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