内容説明
京都学派は西田幾多郎を筆頭とする哲学者らだけのものではない。狩野直喜らの東洋学、吉川幸次郎、桑原武夫らによる文学研究、今西錦司の人類学などさまざまな学統を生み出した。本書が酔故伝と銘打たれているように酒の力があり、三高の気風があり、東洋と西洋の異質性にとらわれない「文」を尊ぶ空気がずっとあった。今日において学問とは何か、大学はどうあるべきかを改めて考えさせる一冊。立本成文氏による跋を収録。
目次
第1部 實事求是―文学研究の京都学派(實事求是とは;一次資料を読みきる―實事求是の核心;学風の啓蒙―内から外へ;深瀬基寛と学統;今西学の登場)
第2部 第二期の特徴(ヨコ社会―第二期の土壌;教養主義―ヨコ社会の理念;独自なもの;第二期と出版社;学風の見取り図;第二期の事柄)
第3部 京都学派人物列伝(第二期を率いた三巨頭;第二期人物列伝;草創期の三傑)
著者等紹介
櫻井正一郎[サクライショウイチロウ]
1936年生まれ。京都大学英文科卒、ケンブリッジ大学客員研究員、京都大学総合人間学部教授、同大学名誉教授。京都学派に入学前から関心をいだいてきた。留学後外国人学者の招聘に尽力した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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amanon
5
この時代の人には敵わない…改めてそう思わされた。京都洛北に位置する京大を地場として、様々な人々が集っては離れ、そして物故していく…そこの登場する人々それぞれが深い学識や探究心、そして我々には到底及ばない胆力を有しており、その凄まじいエピソードの数々に思わず圧倒されてしまう。本書で度々言及されるヨコ社会な雰囲気は同じ京都にある僕の母校にも在校当時僅かだったけど残存しており、あの自由な関係性のルーツはここにあったのか?と思わされた。効率や成果ばかりが尊重される昨今においては、こういう環境は実現不可能だろう。2017/11/17
ふみ乃や文屋
0
本書29頁に「『実事』が足りないのに主観に基づく批評を入れてしま」ってはならないし「まず理解することだ。理解していないのにはねつけると、自分が駄目になる」と書かれてあり、同志見つけたりの念を抱く。自分の思い込みや根拠もないのに一方的に相手の言説を抑え込んで得意になっている人が多いが、これは学問的態度だけでなく、普段の他者とのコミュニケーションにおいても同じことが言える。2018/01/08
tkm66
0
最初の80Pはかなり厳しい。放棄寸前。そこから後は一気呵成。最後ちょっと失速。クドい学者だからこそモノになった・ややクドい好著。思い出した言葉は「人は大切なことも忘れてしまうから」(by山田太一)。2017/11/28
綱渡鳥
0
考古学は実事求是でなければならぬ、と語った樋口隆康や、浜田青陵など考古学者もちょっとだけ登場。 様々な専門分野の超個性的学者たちが残す箴言がいちいちかっこいい。「哲学は寝言ではない」と最終講義にもかかわらず前日の続きで通常通りの講読を行なった田中美知太郎、「冒険によってしか打開できないことがある」と言った桑原武夫。 「過多な情報を語らない克己心」を語ったのは著者自身だったか。2022/09/20
禿頭王
0
☆4。日本の学術界に大きなインパクトを与える人材を輩出し続けている京都大学。自由な校風と妥協のない堅実な学風は一見、相反するように見えますが、それを両立してしまう不思議さ。そんな京都大学を代表する京都学派の人物を、お酒にまつわるエピソードを交えつつ紹介しています。紹介されるエピソードの豪快さ・痛烈さ、そしてどこか漂う哀愁。京都大学から各界を代表する人物が輩出されていく秘密のような、京都大学の根底に流れるようなものが、うっすらと見えてきたように思います。2020/01/04