内容説明
後4世紀に活動し、「古代ローマ最後の歴史の大家」とも評されるギリシア系歴史家がラテン語で著わした本書は、タキトゥスの後を継ぐべく、ネルウァ帝からウァレンス帝までを扱うものだったが、最初の部分が失われ、伝存するのはユリアヌス帝を中心とする同時代史のみ。本分冊では、正帝コンスタンティウス2世治下、兄ガルスの後を受けた副帝ユリアヌスの台頭が描かれる。本邦初訳。
著者等紹介
山沢孝至[ヤマザワタカユキ]
神戸大学大学院国際文化学研究科准教授。1955年大阪府生まれ。1985年京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。1998年京都大学助手、神戸大学講師を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
7
96-378年までを扱う31巻中前半13巻が紛失した本書は、14巻が現存する最初の巻である。本書は19巻までが収録され、コンスタンティヌス帝治世下での副帝ガルスの処刑の年に始まり、弟のユリアヌスが副帝となって指揮したペルシア遠征でのサボル王のアミダ包囲までが描かれる。アラマンニ人との戦いやペルシア遠征に従軍し、自らもアミダから脱出したという著者はその経緯を詳細に記述したゆえに、本書はローマ後期の重要資料と見なされる、だがその美文調の修辞は、キリスト教を認めた皇帝に対するギリシア人の著者の嫌悪を垣間見せる。2022/08/02
belier
1
ユリアヌスと同時代に生きた元軍人の歴史家がテオドシウス1世の時代に書いた全31巻の史書。現存するのは353年から378年までで、この本は359年までをカバー。ガルスの処刑、副帝ユリアヌスのガリアでの活躍、同時期に著者が参加したペルシアとの戦いで敗北するところまで。この書のユリアヌス像が辻邦生の小説のベースだろう。ユリアヌス賛歌だ。執筆時は王朝も変わっているしプロパガンダではなく、真に心酔したのだと思う。主は臨場感ある戦記だが話題は広い。疫病や現トルコで起きた大地震の話もある。よく脱線して蘊蓄を傾けている。2023/07/20
Βουλγαροκτόνος
0
【副帝ガルス時代〜アミダ陥落(354〜359年)】同時代の歴史家アンミアヌスによるまさに第一級の史料。13巻までが失われている点が非常に惜しい。ウルシキヌス麾下で当時の混乱を肌で感じた彼の描写は、非常に淡々としているものの、それが戦闘の恐ろしさをより強く感じさせる。特に遺体の腐敗などの描写は生々しい。大量の注はついているが、頁内で完結しているし理解の補助にもなる。ラテン語が多少でも分かれば注にある底本の差なども楽しめるはず。2022/03/15