出版社内容情報
誰もが不完全であることを認める。これこそが,アフリカ文化に内在した世界観である。自らの「完全」性を信じ,それ以外のものへの不寛容や攻撃を「遅れたものを救済する」正義として正当化してきた西洋的近代の誤謬を糺す可能性がそこにはある。緻密な民族誌から,アフリカの日常的実践の持つ,紛争を回避し和解を進める力を析出する。
【推薦】立本成文氏(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 機構長)
ダイナミックで融通無碍な文化の技法--アフリカ潜在力!! 紛争の国々アフリカで醸成された新しい紛争解決の智慧が明らかになった。アフリカ社会の生の現場での,日本人とアフリカ人研究者との5年にわたる知的格闘の成果がここにある。危機に瀕している人間文化を見直し,これからのあるべき生き方に指針を与える人類の共通財産である。
目次
「アフリカ潜在力」の社会・文化的特質
第1部 伝統的慣習の再創造と「アフリカ潜在力」(グローバル化のなかの伝統的権威者―ナイジェリア・イボ社会における国際移民と首長位;現代に開かれた伝統という潜在力―カメルーン・バミレケ首長制社会の紛争処理と伝統的権威;ケニア中央高地イゲンベ地方の紛争処理における平等主義と非人格性)
第2部 「アフリカ潜在力」的発想と実践(アフリカのローカルな会合における「語る力」「聞く力」「交渉する力」―コンゴのパラヴァー、ボラナのクラン集会、トゥルカナの婚資交渉;悪い友人と良い敵―サンブル・ポコット・トゥルカナの三者関係における平和と暴力の構築;「濃淡の論理」と「線引きの論理」―コンゴ民主共和国ワンバ地域における森の所有をめぐって)
第3部 対立を防ぐ智慧と「アフリカ潜在力」(紛争予防のための潜在力―現代ケニアのコミュニテイ・ポリシングの事例から;共存の作法としての在来知―エチオピア西南部に暮らす農耕民アリと「他者」との出会い;フロンティアとしてのアフリカ、異種結節装置としてのコンヴィヴィアリティ―不完全性の社会理論に向けて)
紛争解決と社会的和解・共生のための「アフリカ潜在力」に向けて
著者等紹介
松田素二[マツダモトジ]
京都大学大学院文学研究科・教授。ナイロビ大学大学院修士課程修了(社会学)。博士(文学)
平野(野元)美佐[ヒラノノモトミサ]
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授。総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程修了、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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