内容説明
「芸術は存在しないもののパスティッシュである」とヴァレリーは述べたが、この言葉こそ数々の「模倣作品」を作り上げたモーリス・ラヴェルの独自性を考えさせずにはおかない。ラヴェルは作品の中で、様々な衣装をつけて現れた。例えば、サディ、シャヴリエなどを聴き手がはっきりと認識するように趣向を凝らしている。しかしこうした要素は、作品の本質に触れるものではない。音楽を構築する素材が、ジャズやロシア音楽や何であろうとも、完成したラヴェルの音楽は、それ以外の何物でもあり得ず、古典的で明晰な構造をした雪花石膏の建物のような硬質の輝きを発するのである。ラヴェルの音楽は澄み切った謎である。
目次
子供時代と青年時代
『弦楽四重奏曲』、『シェエラザード』、ラヴェル事件
『序奏とアレグロ』、『鏡』、『博物誌』
『マ・メール・ロア』、『夜のガスパール』、『民謡集』、『スペインの時』
『ダフニスとクローエ』、『マラルメの三つの詩』、『ピアノ三重奏曲』
『クープランの墓』、『ラ・ヴァルス』
『ヴァイオリンとチェロのためのソナタ』、『子供と魔法』
『マダガスカル島の歌』、『ヴァイオリン・ソナタ』、『ボレロ』
二つの『ピアノ協奏曲』、『ドゥルシネア姫に思いを奇せるドン・キホーテ』
人柄・美学・技法