内容説明
本書は第一編において、新興市場国の通貨危機をとり上げ、まず21世紀型通貨危機の特質を解明するとともに、国際間における短期資本の跳梁を促す契機ともなった、WTOやIMFなどの国際機関を先兵とする、「ウォール街・アメリカ財務省複合体」(バグワティ)による金融、資本自由化の動きを考察した。次に通貨危機対策として脚光を浴びるに至ったカレンシー・ボードの導入案と、国際短期資本の移動に対する規制問題をとり上げ、さらにメキシコとタイにおける通貨危機の発生と、それが他の新興市場国に伝染していく過程を分析した。第二編においてはまず貿易、通貨ブロックと通貨圏の概念規定を明確にし、国際通貨の機能とその要件について検討を加えた。次に公的部門と民間部門の各通貨機能ごとに、円の国際通貨としての現状を分析し、円が国際通貨としてはもとより、東アジアのリージョナル・カレンシーとしても、いかに未成熟な段階にあるかを明らかにした。
目次
第1編 新興市場国の通貨危機(短期資本移動とその対応;メキシコの通貨危機;アジアの通貨危機;アジア通貨危機の伝染)
第2編 円の国際化(若干の概念規定;円の公的通貨機能;円の民間通貨機能)
むすびにかえて―規制緩和の幻想