内容説明
八月、夏休み。五年生の美貴は、働くお母さんのかわりに料理や洗たくをして、毎日を家ですごしていた。美貴には、夏休みに遊ぶような仲良しの友達はいない。学校でも、だれとも友達になりたくないと思っていた。それには理由があって…。伝説の児童文学作家・中島信子の20年ぶりの新作。
著者等紹介
中島信子[ナカジマノブコ]
1947年長野県生まれ。児童文学作家。東洋大学短期大学在学中より詩人・山本和夫に師事。出版社勤務などを経て創作活動に入る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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machi☺︎︎゛
123
子どもの貧困をテーマに小学生の美貴の目線で書かれた児童書。児童書だからそんなに深く掘り下げた話ではないが信じられない気持ちで読んだ。今の現代にこの暮らしは考えられないけど、注釈に17歳以下の子供7人に1人は貧困って書いてあったから、現状、キャベツばかりの食生活、酷暑なのにエアコンすらつけられないって事があるかと思うと微々たるものでも、自分にできる事はないかなって考える。2019/08/25
へくとぱすかる
94
タイトルから原爆を連想した。確かに8月6日の朝から始まり、原爆のニュースも出てくるが、小学生の姉弟の最大の関心は貧しさと食べること。離婚した父は養育費を送ることなく、母と2人の子どもを苦しめている。貧困の影響は学校すら楽しくない場に変えてしまう。長い間会わなかった父が姿を見せるが、姉弟には恐怖でしかない。気丈な姉へのほのかな救いは感じられるが、ラストの1ページが衝撃だ。今この現在、貧困に直面している子どもたちが非常に多くなっているという現実は、物語の外にどうしようもなく存在していることを知らねばならない。2020/12/17
はる
91
子供の貧困…。小学5年生の少女と幼い弟、そしてスーパーのパートで働く母親の家族3人。母親の代わりに料理や洗濯をこなす主人公の少女があまりに健気…。それでも、いつもおなかがペコペコ、たまに食べるたこ焼きや唐揚げひとつに幸せを感じてしまう姿がいじらしい。かつて戦争を体験した作家たちは二度と子供たちにひもじい思いをさせたくないと、多くの哀しい戦争童話を描いた。彼らが21世紀の今、このような児童書が出版されているのを知ったら、どんなに悲しむだろう…。 2019/09/19
ゆみねこ
88
夏休み、小5の美貴は働く母親の代わりに家事をこなし、毎日を家で過ごしていた。小2の弟は家の貧しさをまだ理解しきれていない。懸命にやりくりをする美貴が健気で涙が出てくる。本当に必要な人に支援の手が差しのべられることを心から願いたい。2019/08/22
miww
88
子供の貧困について小学生目線で書かれた児童書。子供が食べる事を我慢する姿は辛い。真夏にエアコンもつけられず母親の代わりに家事をこなし、弟を思いやる美貴に胸が痛んだ。頼る人のいない親子の置かれた状況が分かるにつれやるせなく、ほんの小さなきっかけで崩れてしまうだろうギリギリの生活から抜け出す難しさを思う。巻末に書かれた一行「現代の日本では17歳以下の子供な7人に1人、およそ270万人が貧困状態にあります」に愕然とした。2019/08/16