内容説明
家の近くまでくると、ロクが、尾をふりながらうれしそうにかけてきた。「ロク、ぼくは疎開には行かんぞ。ロクといっしょにおるぞ」ぼくは、ロクの顔を手のひらでおもいきり押してやった。ロクは、顔をゆすって、ぼくにくっついてくる。もう、さびしがったりしないぞ。ぼくは、ロクの顔を、もうひと押しすると、ぱっとかけだした。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆうゆうpanda
44
作者は1933年広島生まれ。児童文学作家那須正幹氏の実姉です。那須氏を児童文学研究会に誘い、創作のきっかけを作った人です。広島に原爆が投下された時は疎開中で直接の被害は免れました。(那須氏は3歳で母に負ぶわれて被爆)実際の地名を出しながら創作であると断りをいれている本書。被爆者を気の毒に思いながら、被爆をしていない自分にどことなく後ろめたさを感じている、そんな距離感で書かれているという気がします。8月6日の朝に夢枕にたったロク。お亡くなりになった沢山の人々もこんな風にお別れを言いたかったに違いありません。2017/03/15
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