内容説明
1976年夏、ゲイリー・ギルモアは2人の男から金を奪った。そして、彼らを冷血にも射殺した。これらの殺人によりギルモアは死刑囚となった―だが彼は自分に与えられた判決を無期に減刑させることは十分に期待できた。当時アメリカでは10年以上の刑に服することはなかったし、死刑執行も行われていなかったのである。しかし、ゲイリー・ギルモアは死を求めた。死の判決を権利とする彼は、州(国家)などと争いを起こし、世界で最も有名な殺人者となった。また、ギルモアの死刑執行は最も恐ろしいメディア・イベントとなったのである。『死刑執行人の歌』は希望のない犯罪者であるギルモアへの強い興味をそそる物語であり、また恋人ニコールの真実の人生ストーリーはまるで小説のようである。ピューリッツアー賞、ベストセラー・ノンフィクション。
目次
第1編 西側の声(ゲイリー;ニコール;ゲイリーとニコール;給油所とモーテル;死の影;ゲイリー・M・ギルモアの裁判;死刑囚監房)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
389
【ピューリッツァー賞・原書】ゲイリー・ギルモアの生涯と、死刑判決までがbook1。523ページの内容を数日で読み上げた。まずは著者の取材力に圧倒される。そして取材内容を再構築した彼の構成力にも。時おり読者にささやきかける著者の声が聴こえるようだ。「これはフィクションなんだぞ」と。高卒の資格すらないゲイリーの、高い知能を思わせる手紙や証言の数かずが痛々しい。彼とニコールは、出逢うべきして出逢ってしまったのだろう。実際に読んでいるのは:https://bookmeter.com/books/31023962019/04/05
ケイ
128
殺人者ゲイリー・ギルモア、仮出所から親戚の住む街での生活、犯罪、裁判まで。上巻だけで二段組みで600ページ弱。たくさんの人物の背景まで詳細に記される記述にすでに読み終えた気分なのだが、 さらに長い後半には何が描かれているのだろう。ノーマン・メイラーは「裸者と死者」を読んで感動し、他に作品はないかと思っていたところ、モルモン教関連の本からこちらを知る。下巻を読んだら村上春樹訳の『心臓を貫かれて』を読む予定。感想は下巻に。2019/03/15
春ドーナツ
16
「心臓を貫かれて」は家族の物語、本書はゲイリーとニコールの物語という印象を持つ。たぶん、トルーマン・カポーティの「冷血」を読んだときに、ノーマン・メイラーのことを知ったのだと思う。いつか読んでみたいと計画しつつ平成は終わっていた。587頁で二段組にたじろぐ。ゲイリーの肉声やあらゆる周辺情報の総量はナイアガラの滝のようだ。何も聞こえないし、何も見ることができない。そのうちに無感覚になった。ゲイリー・ギルモアは常に薄暗い磨りガラスの向こうにいた。下巻を読み終えても私は彼に接近することはできないような気がする。2020/06/09
ブラックジャケット
8
私の読書体験の中でもカポーティの「冷血」は、ズッシリと身体に刻印された。1979年にノーマン・メイラーが発表した本作は、連続殺人で死刑を宣告されたゲイリー・ギルモアを題材にしたノン・フィクションである。しかしメイラーの方法論はすさまじい全体小説志向だ。力技で積み上げる。十数年死刑が行われたことのないユタ州で、死刑宣告を受けたゲイリーと周辺の人物を底網漁的に活写する。上巻末では兄ゲイリーを描いた「心臓を貫かれて」を上梓した末弟のマイカルが登場する。70年代アメリカそのものを鷲掴みする。巨編になるわけだ。 2018/01/25
tai65
5
星4つ2017/02/13