内容説明
詩情豊かな賢治ワールドとみずみずしい自然写真のコラボレーション。銀河鉄道の夜、セロ弾きのゴーシュ、やまなし、雪渡り、よだかの星、なめとこ山の熊、春と修羅など…、約40の作品世界との新たな出会い。アリの目線から銀河の果てまで、賢治がいざなう光と風の幻想旅行。
目次
第1章 生きものたちへのまなざし(春の目ざめを訪ねて歩く;新しい命の旅立ち ほか)
第2章 大地との語らい(火山の噴火と大地や大気の誕生;青白き地層との対話 ほか)
第3章 風と水をめぐる旅(又三郎はどこからやってきたか?;雲からの通信を聴く ほか)
第4章 宇宙との交感(宇宙から聴こえてくる歌;北の空で時を刻む星たち ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきあかね
19
厳しくも豊かな花巻の自然の写真が、賢治作品の抜粋と相まって、理想郷イーハトヴの世界を現出している。冷害に苦しむ寒村は、言葉の筆によって、とりどりの色に染め上げられる。 どこまでも広がる雪景色に小さく残るキツネの足跡の写真は、「堅雪かんこ、凍み雪しんこ。」のリフレインが楽しい『雪渡り』とマッチしている。『やまなし』では、「谷川の底を映した二枚の青い幻燈」と表される幻想的な水底と、水を貫き魚を捕える翡翠の美しい怖さが印象的だ。 賢治は、「これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や⇒2023/12/28
こまつきよみ
1
宮沢賢治がどのように物語を生み出していったのか想像を掻き立てられる程に写真が美しい一冊。賢治はこんなに素晴らしい景色を見ながら育ったのかと只只納得するばかり。自然や鳥や動物達を擬声語を巧みに使って美しい文章を紡いでいく賢治。読んでいると自分から出るため息すらも美しく感じてしまう程である。十二分に賢治の世界観を堪能することができた。今所属する合唱団で混声合唱とピアノのための「イーハトーボ農学校の春」を練習しているところである。視覚から入ったものをどう聴覚に訴えるか、この写真集を見て歌がどう変わるか楽しみだ。2022/09/03