内容説明
世をあげて欧米の模倣だけに眼を奪われていた明治中期において、すでに独創性の重要性を見抜き、基礎科学の振興とその教育の充実を提唱した先覚的化学者桜井錠二。そして、彼と激しい対立・抗争を重ねた、長井長義を頂点とする反桜井学者群。これら両者の思想・言動を、丹念に蒐集した史料を基に、しかも多くのエピソードを交えつつ生き生きと描き出し、従来タブーとされていた学界の裏面を赤裸々に語っている。
目次
第1話 草創期の東京化学会
第2話 明治20年代における桜井錠二の受難(杉浦重剛に化学訳語論争を挑まれる;工学会で化学観が批判される)
第3話 東京化学会に最大危機到来
第4話 東京化学会の国際的学会への羽化
第5話 理化学研究所創立に秘められた桜井錠二の活躍(財界代表渋沢栄一の苦悩;高峰譲吉の学士院賞受領とその反響;大河内正敏第3代所長の誕生)