出版社内容情報
イタリアのマフィアや中国の黒社会のように日本のヤクザと類似する人々がイスラム社会にも存在する。本書はイラン、イラク、シリアなどで歴史上登場した多くの任侠無頼の足跡を追うとともに、日本の皇太子も訪問したテヘランのズール・ハネ(力の家)など、今に生きる姿も紹介。
内容説明
イスラム社会にも任侠と無頼に生きる人々―ヤクザがいた。ムルッワ(男気)を貫き、義を重んじた中東のヤクザ―アイヤールやルーティーの生き方を初めて日本に紹介。アジアの東と西との「比較任侠学」への新しいアプローチ。
目次
第1章 中世イランのヤクザ(アイヤールの出現;アイヤールの二つの顔;任侠道とは何か;文学作品に見るアイヤール像;アイヤールの起源)
第2章 バグダードの任侠と無頼(アイヤールの登場;バグダードの建設と発展;スンナ派とシーア派のアイヤール;アイヤールの素性;アイヤールの出自と組織;町の顔役として)
第3章 ヤクザが生きる町―ダマスクス(二つの顔のヤクザ;ヤクザの登場;ズールの素顔;街区の支配者;政治の腐敗;無頼の変身)
第4章 近代イランのヤクザ(ズール・ハーネの世界;ルーティーのイメージ;ルーティーと地域社会)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
17
身分制度の外側にあって、男伊達を標榜し、権力に対抗するはみ出し者がイスラムの都市特有の迷路のような小路で活躍するエキゾシズムを期待しながら読んでいました。「ズール・ハーネ」(力の家)はとても中東的な要素ですが、民衆に支持される義賊的な側面、権力側から見れば犯罪者、そして権力者に利用される勢力などいろいろ側面をもった存在は、むしろ普遍的な「民衆の夢と希望と挫折」なのではないかと感じました。2012/03/04
の
0
イスラム都市の泥棒やならず者たちが組織した独自な社会集団が、都市の秩序にどのような影響を与えたのかを説く。「ヤクザ」と称している所から察せるように、裏取引を糧とする「マフィア」との側面もあるが、義賊に似た支配への反逆の精神が強い集団で、圧政時や他国家の侵略時には町民と共に武装し街を守ったとされている。また、祭事や大会事には率先して会場を作り上げたりと、住民からも一目置かれた存在であった。それも、イスラム社会の政治理念が相対主義で、正義は誰にでも出来るといった、自由な観念があったからだろう。日本も似ている。2011/07/02
thuzsta
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ペルシア語圏とアラビア語圏の違いについてもっと書いて欲しい。2011/02/15