出版社内容情報
ナイルデルタの用水堀の側に残された嬰児の死体をめぐってイスラム農村社会は歪みを露呈し、亀裂を広げていく。エジプトの代表的作家が一女性季節労働者の悲劇を通し、怒りと慈しみをこめて生の現実の側から形骸化したエジプトの社会規範を撃つ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くれの
6
物語を通してエジプト王政末期の国民の姿を目の当たりにしました。ハラームも赤信号のようにみなで渡れば怖くない存在なのかなと感じました。遠い中東に描かれる群像は人種も宗教も超えて本邦の人間社会と何ら変わりありません。2019/06/26
belier
3
第2次大戦後すぐのエジプト農村が舞台の小説。時代といいスタイルといい昔読んだスタインベックの小説を思い出した。この小説では、厳しい農村の現実を描きつつ、ほのかなユーモアが漂い、因習に囚われながら登場人物はほとんどがいい人たちで精一杯生きている。中心人物は貧農を管理する側の人物であり立場上搾取する側に立ちながら、自分なりに人道的な振る舞いをしようとする。背景として、イスラム圏の農村社会が西洋流の資本主義に翻弄されている現実があるのだ。よかった。2016/06/17
珈琲好き
0
短編「肉の家」ほどのインパクトはなかった。農村の群像劇として楽しめた。2013/04/27