出版社内容情報
沖縄戦と、それにつづく戦後を生きてきた沖縄の人びとに共通する揺れる心の軌跡……本土に向けた切実なる願いと深い隔絶感を、力強く、美しく、優しくうたいあげた幻の名著。 ★★★週刊朝日評=本を開くものの心を打ち、力強い美しさとやさしさが交叉する本である。★★★ ■■■岡本恵徳氏=沖縄の戦後を生きた人々の精神の軌跡が刻み込められている。これをひもとく人は、1960年代の作品にみなぎる不条理への激しい怒りと、1970年代の作品の沈潜した思いを、一目のもとに了解するにちがいない。■■■島尾敏雄氏=儀間比呂志の画には沖縄の心と肉が鋭く乗り移っているといわなければならない。仮初めの陽気を突き抜け静寂の間合いで息をひそめている。新川明の詩は男性的な表情を放散しつつ含羞のやさしさを送ってよこす。それは何といっても沖縄の核心のあらわれにちがいない。環境の苛烈さを見据える強いまなざしと愛がある。■■■ ●●●本書「まえがき」より=戦後、沖縄は米軍の軍事統治下にあった。私は大阪に住みながら、ふるさとの風土と、状況をみつめた絵を描き、新川は統治者の締めつけのきつい沖縄にあって、「琉大文学」などに抵抗の姿勢を主題とした感受性の強い詩を書いていた。その二人が、大阪で顔をあわせた。しばらくして私たちは似顔絵ならぬ、『詩画集おきなわ』をつくった。古里に住めないぼくたちは/祖国の街角に立って/猛け猛けしい鷹になり/南の空を睨む。新川の、その「序章」にたいして、私も彫った。大蛇に託した侵略者の黒さと、舞姫による静かな抵抗と、天上に輝く太陽によって祖国を表徴した版画を。限定300部の自費出版だった。ページ32、手摺版画4点貼付、頒価1000円也。だが、世に出たのは、売れたもの29、寄贈18、あわせて50部にもみたなかった。(幻の書と、よばれた所以である。)あれから23年---。あちら、こちらで、その再刊を望む声を聞いた。古い作品は、見直してよい気持がするものではない。とくに、あの詩画集は、日本を「祖国」視するなど、思想的にも未熟さが目立って、お互い忸怩たる思いがあった。「しかし、若さがもつ清新さもある。あの時代あっての、今日の新川、儀間ではないのか」と、郷土の大先輩である詩人の牧港篤三さんはじめ、多くの友人たちの勧めもあって、『詩画集おきなわ』は、ここに、再び陽の目をみることになった。と、いってもそれは復刻ではない。新川は、詩に手を入れたし、私も版画のいくつかを差し替えた。また、新沖縄文学21号(1971年)に掲載した2人の詩と版画も7篇加えて、2部構成とし、タイトルも『日本が見える』と改題、体裁を新たにしたのである。●●●
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