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出版社内容情報
第三世界の光と闇が交錯する南部アフリカの乾いた大地。開発援助の現場ザンビアで著者が見たものとは……。
「南」の開発援助にかかわってきた「北側」のひとりの人間としての内なる声を書き綴る。
【書評再録】
●読書人評=「開発」の効用と南北問題を考え直す貴重な示唆を与えてくれる。
●地理評(1993年3月号)=本書は青年海外協力隊員としてアフリカのザンビアに赴任し、体当たりで村落開発に取り組んだ女性の活動記録であり、心の軌跡でもある。スーッと読み進めて、読後感も爽やかである。さりげない記述のなかに、本質的に開発援助とはどうあるべきなのか、またそれは一体誰のために行なわれるのかといろいろと考えさせてもくれる。
●婦人展望評(1992年11月12月号)=開発援助の難しさを改めて認識させてくれる。
【内容紹介】本書「あとがき」より
援助の“現場”は、華やかではない。日々の仕事と生活の連続だ。喜び、怒り、嫉妬、野心、恐れが渦巻いている点では、日本の日常と変わらない。ザンビアでの時は、ゆったりとした流れではあったが、慣れてくるにつれて、流されていく自分に気がついた。少しずつでも、日常の中でたまっていく言葉を書き綴っていくことにより、自分や他者を見つめ直したいと思うようになった。
この本は、ザンビア滞在中、そんな思いのもと日本の友人たちに書き送っていた「モンゼ便り」、折々に綴っていた日記、個人的な書簡などがベースとなっている。とりわけ、医療分野を通して第三世界にかかわりつづけている友人三砂ちづるさんとの約150通におよぶ往復書簡は、当時の私の内なる声を掘り起こしていく助けとなった。
ザンビアの状況も、南部アフリカ全体の状況も、私がザンビアをあとにしてからの二年間に変わっていった。また、私自身の勉強不足、分析の甘さから、真実とは違う記述をしてしまっているところもあるかもしれないが、あえて、その時々の人々の声や私が感じたことを中心に書かせていただいた。さらに、これは、ザンビアのモンゼという限られた地域が主な舞台となっている。第三世界がますます多様化するなかで、私の経験はほんの一側面でしかない。これらの点も考慮にいれて読んでいただければ幸いである。
ザンビア一国にしても、さまざまな側面を持つ。そのザンビアを一言で語れないとわかっていても、あえて、私なりのザンビアのイメージをいえば、それは“太陽の光”と“夜の闇”だ。
ザンビアに赴任してすぐ、底抜けに明るく力強い人々は、まるで太陽からエネルギーを吸収しているかのように感じられた。その印象は終始かわることはなかったし、私の栄養源は彼らの明るさとたくましさだったといっても間違いではない。
しかし、しばらく暮らすうちに、明るさの陰にある闇の大きさにも気づかざるをえなかった。ザンビアでは“飢えのエチオピア”や“アパルトヘイトの南アフリカ共和国”などに比べたら、闇は闇として浮き彫りにされにくく、日本の新聞の見出しとなることも少ないが、闇はさまざまな形で存在していた。同僚や近所の人の死。なかでも、子どもの死とその死を嘆き悲しむ母親の姿は、何度目にしてもやりきれないものだ。経済・社会状況の悪化。そのなかで翻弄される人々。能力や個性を生かしきれない人々の苛立ちと諦め。決定するということ以前に少なすぎる選択の余地。
こうしてザンビアで光と闇の両方を認識し、行動を起こしていく過程は、最初の第三世界経験となった南アジアでの体験をも消化しなおす助けとなった。南アジアを訪れたあと、あふれでてきた言葉をうけとめてくれる器は、アフリカに来てはじめて見つかった。それは、ちょうどザンビアで老婆が土をこね形をつくり焼き上げていく素焼きの壺のように、時をかけていく必要があったのだ。
私は、“南”の太陽の光と夜の闇をくぐりながら、自分のなかの霧が晴れていく気がしている。いまだに、霧の向こうに何があるのか、何を見つけようとしているか、はっきりとした答えにいきついてはいないが、歩き続けたいと思っている。
これからも、“開発援助”というさまざまな思惑・利害が渦巻き、北側のあらゆる意味での“価値規範”をおしつけるという部分を拭いさることのできない仕事にかかわっていくだろう。その際、たとえ、青臭いといわれようと、ナイーブすぎるといわれようと、南の市井の人々の哀歓によりそっていける人間でありたいと思っている。これは決してセンチメンタルにいっているのではなく、それこそが“開発援助”にかかわるあらゆる人間の最低限の条件だと思うのだ。
【主要目次】
▲▲第1章 女たちの大地
1.儀式
風が悠々と吹き抜けていく大地/女の子と男の子/村の結婚式/かけぬけていった男たち/娘を連れていって
2.ジャカランダの木
私の仕事は村落開発/ミスター・バンダ登場/閉鎖されていたカレッジ/オフィスの人間模様
3.パワフルな女たち
太陽をエネルギーにするミセス・パッシー/女性フェスティバル/ノープロブレムはプロブレム
4.女性組合と男たち
正真正銘のムシンビー/結婚が仕事の障害になるようじゃしょうがないよ/村に泊まりこむ/太陽の男マズバ/日々は牛の毛よりたくさんある/男の社交場へのりこむ/男の役割、女の役割
5.識字プログラム
「昔はよかった」/依存体質/多言語・無文字文化と識字
▲▲第2章 かけがえのないあなたの人生
1.白い天井を見つめながら
ヒッチハイク/はじめての入院/病床の子どもたち
2.天使の詩
勤勉な日本人/一時帰国/自然治癒力/迷い
▲▲第3章 輝く瞳・濁った目
1.変革のためのトレーニング
フレイレとの再会/意識化
2.依存から自立へ
川のコード/課題提起型と銀行型/ミセス・パッシーの告白/教育ってなんなの
3.官僚制と「しかたがない」
歌と踊り/「シマナンサ行きをつづけて……」/あたらしい企画/「省の利益だけを考えろ」/縦割り行政という壁
4.演じる女たち
男を、村を巻きこむ
▲▲第4章 満月の虹
1.成人式
首長の娘/8人の妻、80人の子どもたち/霧の中の城/沖縄での成人式
2.動きはじめた南部アフリカ
紙幣交換/「俺たちはどこへ行くのだろう……」/天安門事件と南部アフリカ/村の生活と国際金融政策
3.くちびるにバラの花
ネルソン・マンデラ釈放/情熱の女
4.岩の家ジンバブエへ
砂糖きびのかじり方/“ビクトリア”の滝/巨大石群遺跡とセシル・ローズ/独立闘争の闘士/アフリカに祝福あれ/満月の虹
▲▲第5章 援助貴族のはしくれとして
1.援助産業に就職するには
アフリカのNGOからの電話/通り過ぎていく人間
2.なぜ“援助”なのか
もうひとりのミナコ/根無し草/疎外感/援助貴族/ファースト・フレンド/恋に落ちたら
内容説明
世界一の援助大国ニッポンからアフリカの辺境へ飛びこんで3年。渇いた大地でミナコが聞いた“天使の詩”とは。
目次
第1章 女たちの大地
第2章 かけがえのないあなたの人生
第3章 輝く瞳・濁った目
第4章 満月の虹
第5章 援助貴族のはしくれとして