出版社内容情報
【厚生省中央児童福祉審議会推薦映画の原作絵本】
米軍の沖縄戦記録フィルムに、白旗をかかげて米軍に近づいていく六歳ぐらいの少女がいた。
少女のあとから、両手をあげてついてくる日本兵がみえた……その衝撃的な映像に触発されて、二人の沖縄の作家がつむぎだした感動の絵物語。
【書評再録】
●朝日新聞評=背景の自然が美しければ美しいほど、沖縄の悪夢は今なお痛々しい。素朴な版画が胸を打つ。
●沖縄タイムス評=親と子が一緒に読んで戦争と平和について考える絵物語。
●歴史地理教育評=すばらしい絵本。反戦平和の感動的作品である。
【内容紹介】本書「あとがき」より
市民とか民衆とかいわれる人たち、つまりふつうに暮らしているあなたや私にとって、戦争とは何であり、軍隊とはどういうものであるのか、ということがこの絵本のテーマです。
さる太平洋戦争では中国をはじめたくさんの国の人たちが犠牲になりました。日本の国民もヒロシマやナガサキに代表される大きな被害をうけました。しかし、沖縄戦は、ほかにみられない軍隊の姿をさらけ出しました。
本来、軍隊は国土と国民を守ることをタテマエにしていますが、究極的には自国の国土の中でさえ、自国の国民に銃口を向けて食糧を奪い、無闇に住民を殺す存在でしかないことを明らかにしたのです。それが、戦争であることを沖縄戦は教えました。
そのことは、これまでも書かれたことですが、私たちは戦争を知らないおかあさんとお子さんたちが一緒に読んで、平和の大切さを一緒に考えてもらうことを願って絵本をつくりました。
主人公の「りゅう子」は、戦争のいちばんの犠牲者である当時の子どもたちをあらわす「りゅうきゅうの子」という意味で名づけたものです。物語は、記録映画の一つの場面が語りかける衝撃的なメッセージをモチーフにしましたが、映画の少女の実体験をそのまま再現したものではありません。そのため、実在する映画の少女には、あえて直接の取材はしませんでした。
いまわしい沖縄戦の全体像を絵本という制約のなかで描くことは到底できませんが、のこされた歴史の教訓を少しでも知ってもらえれば、と思います。(新川明)
私たちはこの絵本作りで、沖縄戦世を追体験しました。
はじめに、沖縄一フィート運動の会が入手した米軍の沖縄戦記録フィルムに、爆砕された山の石ころ道を、白旗をかかげて米軍に近づいてくる少女がありました。おかっぱ頭で、もんぺはずたずたに裂け、焦土を踏む素足が痛々しい。
さらに映像は、ロングになり、少女の約十メートル後から、両手をあげて、ついてくる日本兵たちの醜い姿まで写していました。それは、わずか数秒のカットでしたが、見ている私たちにあたえた衝撃は小さくありませんでした。
少女にとって戦争とは何だったでしょうか。遊び盛りの六、七歳。蝶を追い、魚と共に泳いだうるわしのふるさとに、突然空から、海からいくさがやってきて、街や村を火の海にした。家族と共に逃げまどった硝煙弾雨の戦場。そこで体験したものは飢えと、恐怖。血と死。さらには、友軍の兵隊による壕追い出しと、食糧強奪。そして住民に対するスパイ呼ばわりと虐殺などなど。
「何故? どうして?」と、少女から問われたとき、戦中を生きた私たち大人は返事に窮してしまいます。たとえ、強力な国家権力の統制と弾圧があったとしても、これに屈し、ずるずると戦争に巻き込まれ、多くの子どもを犠牲にした罪は、自分もひどいめにあったからといって免れることはできないと思います。
そういう反省をこめて、私はこの絵本の版を彫りました。世界中の「りゅう子」に、二度と、白い旗をもたせないためにも……。
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