出版社内容情報
これからの歴史教育を方向づける書。それぞれの専門領域で、先導的役割を果たしている研究者13名による、フォーラム「歴史と歴史教育」での講演記録。 ★★★図書新聞評(1996年9月7日)=読む前に予想していた以上の知的刺激を与えられた。今後の日本の社会・教育について考えあうサークルをつくり、本書をめぐって歴史認識を深めるようにしたい。本書はそのサークルのテキストに最適であると思う。★★★ ●●●「まえがき」より=近現代日本とアジア諸地域との関係史の考察を深めるとともに、その関係史認識を史的に歪めてきた重要な要因として教育内容を再検討する契機を得たい。●●●「あとがき」より=2年前横浜で開催されたフォーラム「歴史と歴史教育」に参加した13名の講師が講述内容をまとめたのが本書である。本書への収録に際し、速記録を元にそれぞれが加筆訂正を行った。その後の2年間の研究成果が随所に投入されている。全体を読み返してみて、フォーラム当日に受けた印象や感想が正しかったことがわかる。高レベルの内容が平易に語られていたし、講師とコメンテーターの討論も新鮮な知的刺激を与えるものであった。各部の5人のコメンテーターの先生は適切な意見や知識を出されて、会場を盛り上げてくださった。フロアからの質問も多様で、鋭かったと思う。したがって本書は会場に来なかった人のために伝えたり、文献として残すだけの意義ある内容と、編者の一人としての私は確信をもった。●●● 【主要目次】▲▲第1章・日本と東アジア=勝海舟と明治日本のアジア観(幕末から明治へ/新しい価値観の台頭/新しい国家意識の成長/日清戦争をめぐって/近代日本の中国認識/中国認識の視点/「文明開化」への不満/アジア主義の質について)/近代中国の福沢諭吉理解(日本の思想と現実についてのとらえ方/清末期の福沢紹介/独立・自由・権利に関する梁啓超の理解/「和文漢読」の読み方/日本経由の西洋文明導入/福沢理解の断絶と連続/異文化理解の思考様式)/戦後の日韓関係と歴史教育(高まる関心、乏しい知識/なぜ「戦後の日本とアジア」なのか/日本史教科書に見る「戦後日本とアジア」/アジアに対する戦後「処理」の実像) ▲▲第2章・近代日本と軍=明治新国家と兵士 世界舞台への登場(はじめに/明治日本の新式軍隊/兵士と新国家/戦争の教訓/世界の舞台での日本兵士/おわりに)/安全保障の条件 大正・昭和期の軍(藩閥指導者の時代/田中と宇垣の時代/皇道派と統制派/地理的膨張の思想/技術の倒錯/「過慮」の弊害) ▲▲第3章・近代日本のジャーナリズム=大正期の総合雑誌と「文明批評家」たち(前史/大正デモクラシーと「中央公論」および「大阪朝日」/大正8年という年/大正期における総合雑誌の変化)/昭和戦前期のジャーナリズムの諸相(ジャーナリズムの構造変化/マスメディアの登場/白虹事件と不偏不党/新聞と普通選挙/新聞の寡占化/国策メディアとしてのラジオ/軽視される自由/エスカレートするタテマエ論)/戦後メディアの戦争責任の取り方(新聞社/出版社/メディアをとりまくもの) ▲▲第4章・近代日本の財政と政治=井上馨の財政論と国会論(絶対主義論と近代化論/明治維新の四つの目標/工業化は下から、民主化は上から/天皇の詔勅と大久保派の不満/井上馨と福沢諭吉)/財政家・政治家としての高橋是清(高橋是清の略歴/銀行家としての高橋是清/財政家としての高橋是清/政治家としての高橋是清/財政と国防・外交)/井上準之助の財政金融政策と当時の外交(日本における国際金融家の登場/最初の国際金融家としての高橋是清/主役の交代/井上準之助の時代) ▲▲第5章・歴史教育と文部行政=近代日本の教育内容政策とそのアジア認識(検討課題の限定/教育課程政策変動の概略/教科書行政の変動/戦前教科書に見るアジア認識の質)/戦前期日本の「国史」教育と植民地(日本教育史上の盲点・植民地の教科書/戦争責任と植民地の教科書/3種類の国民学校国史教科書/植民地での先導的施行/大東亜会議と国史教科書/国史教科書に見る朝鮮と台湾の違い)
内容説明
これからの歴史教育を方向づける―。それぞれの専門領域で、先導的役割を果たしている研究者十三名による、フォーラム『歴史と歴史教育』での講演記録。
目次
1 日本と東アジア
2 近代日本と軍
3 近代日本のジャーナリズム
4 近代日本の財政と政治
5 歴史教育と文部行政