出版社内容情報
藤原彰、藤岡信勝、藤田久一、中村政則ほか、第一線の研究者・論客18人がそれぞれの観点から東京裁判を徹底的に検証し、多様な意見を戦わせる。
【書評再録】
●日本経済新聞評(1997年10月12日)=東京裁判の評価は日本の戦後の評価につながる。類書は多く、それぞれの立場からの意見が述べられているが、本書は1冊で東京裁判の意味を多角的に学べる点で便利だ。話し言葉で論じている点もいい。
●週刊東洋経済評(1997年11月8日号)=日本人の歴史認識を深化させる本。この「争論」から受ける知的刺激は大きく、まさに“多事争論”の本といえる。ここには東京裁判への〈多様な視点の導入〉がある。異なった意見や歴史観を持ち、世代も違う政治学者、法学者、経済学者、社会学者、歴史学者、教育学者が一堂に会しての議論だから、面白いのだ。
●日本歴史評(1998年5月号)=東京裁判に関する基礎的知識を提供する啓蒙書としても、東京裁判の研究史を整理し、将来の研究の方向を展望する専門書としても読みごたえのある書物となっている。
●出版ニュース評(1997年11月下旬号)=東京裁判の本質が分かりやすく提示されている。
【内容紹介】本書「はしがき」より
東京裁判は、日本をいわば国家として裁いた裁判だった。しかも、日本人が知らされていなかった戦争の実情を明らかにし、昭和以降の日本の歴史を考えるうえで、日本人自身の歴史認識にも多大な影響を及ぼす出来事であった。
しかし、この裁判については、国家の指導者が戦争責任を理由に国際的な法廷で裁かれるのが、ニュルンベルクの裁判と並んで歴史上初めてだったことから、裁判として果たして正当なものかが、当初から疑問視された。ましてや、自らの国の歴史を国際的に断罪されたので、日本人の間に民族的な反発が強く生じる可能性があることも、はじめから予想しうることだった。
東京裁判について今まで言われてきたさまざまな意見を想い浮かべながら、50年たった時点で改めて見直すのに、どうするのが最も良いかを考えたのは言うまでもない。そこで方針としたのは、端的に言って、多様な意見を一堂に集めて相互に議論する機会を作ることであった。
それも単に東京裁判を支持する人から、批判的な人、それに否定的な人といった立場の違いばかりでなく、政治学者、法学者、国際法学者、経済学者、社会学者、教育学者と研究分野の違う人たちにも参加していただいた。しかも、日本人の観点だけに偏るのをなるべく避けたいと考えて、国際的な評価も取り入れるために、日本研究以外の専門家にも参加していただくように配慮した。東京裁判の評価が、いまだにアジアや欧米諸国との関係に影を落とす嫌いがあるのを考慮して、この点は特に重視したところでもある。
【主要目次】
▲▲第1章・歴史の中の東京裁判
日本の近代化とアジア・太平洋戦争(第一次世界大戦がもたらしたもの/戦争への道程/背伸びをした日本)
東京裁判と戦争責任(国際裁判の特徴/「通例の戦争犯罪」と「人道に対する罪」/「平和に対する罪」/国際連盟と戦争の違法化/不戦条約と満州事変/個人の処罰の問題)
東京裁判とニュルンベルク裁判(ニュルンベルク国際軍事裁判とニュルンベルク継続裁判/諸官庁裁判とユダヤ人強制移送問題/免責事由にならなかった「上からの命令」/ニュルンベルク裁判とその犯罪概念の射程--東京裁判との若干の比較)
コメント
▲▲第2章・国際政治の中の東京裁判
検察の論理と裁判の展開(はじめに/検察の始動/起訴状の成立/公判の長期化/判事団の対立構造/東京裁判の論理/裁判批判の論理)
アメリカの対日政策と東京裁判(アメリカの世論--正義の実現/初期の対日政策と戦犯裁判/裁判の長期化/新たな正義/アメリカの政策転換/おわりに)
中国の立場とソ連の立場(中国の人的、物的損失/中国の戦犯裁判/中国の戦犯処罰方針/中華民国政府の東京裁判への対応/ソ連の東京裁判に対する対応/むすび)
コメント
▲▲第3章・裁かれた人、裁かれなかった人
東条英機と石原莞爾(陸軍軍人を研究するということ/なぜ石原は不起訴になったのか/被告訴追のための情報収集/「反対の表明」とは)
広田弘毅と重光葵(広田と重光--そのプロフィール/幣原外交における「英米協調」と「日中提携」/広田外交の展開/防共外交への傾斜と太平洋戦争の開幕/太平洋戦争期の重光外交/外交官の役割と評価--外交史の観点から)
天皇と宮中(蘆溝橋事件と天皇/日中戦争拡大と天皇/天皇不起訴の理由/天皇免責の歴史的意味/東京裁判と木戸)
コメント
▲▲第4章・東京裁判の意義
昭和史研究と東京裁判(東京裁判史観とは何か/戦争観をめぐって/国際法は動く)
戦後教育と東京裁判(日本の悪のみを抽出して歴史を語る誤り/米ソの国益に基づいて合成された日本の近現代史像/成熟した歴史解釈を目ざす「自由主義史観」)
パル判事の論理(国際法は変わったか?/戦後半世紀の国際秩序/旧日本の失敗)
コメント
▲▲付録
判決一覧
裁判官一覧
極東国際軍事裁判所憲章(抜粋)
略年表
内容説明
戦争責任・国際法・歴史認識・歴史教育などをめぐって18人の研究者が徹底的に検証する。
目次
1 歴史の中の東京裁判(基調講演・日本の近代化とアジア・太平洋戦争;東京裁判と戦争責任 ほか)
2 国際政治の中の東京裁判(検察の論理と裁判の展開;アメリカの対日政策と東京裁判 ほか)
3 裁かれた人、裁かれなかった人(東条英機と石原莞爾;広田弘毅と重光葵 ほか)
4 東京裁判の意義(昭和史研究と東京裁判;戦後教育と東京裁判 ほか)
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