出版社内容情報
J.K.ガルブレイスが絶讃した書。
ハーバード大学名誉教授で、ノーベル賞を受賞した心臓病専門医が、アメリカの最先端医療現場での豊富な経験をもとに、医師・医療のあるべき姿を熱く語る。
「The Lost Art of Healing」の前半部分を翻訳した本書は、心臓病と心の問題を掘り下げ、問診の重要性と心のケアの大切さを訴えながら、テクノロジーに頼る現代医療を憂慮する。
癒しとしての医療への回帰を呼びかける感動の書。
【書評再録】
●岩手日報、中国新聞ほか評 永井明氏・医療ジャーナリスト(1998年5月4日)=ぼくはふつう、偉い先生の本など読まない。しかし、この本は違う。読むに足る。77歳になる老医師が語る含蓄のある言葉は、日本の読者にもとても参考になるはずだ。
●東京新聞、中日新聞ほか「この一冊」(1998年4月19日)=数多くの実例を引きながらの尊厳ある死をめぐる考察は、厳粛で崇高なメッセージとして読む者の胸に響く。
●週刊朝日評(1998年5月25日号)=95%の人が病院で死ぬ時代となった。確実に患者となるあらゆる人が読んでおきたい一冊である。
●週刊現代評(1998年5月9日-16日合併号)=これほど率直に、医療の原点を見直すように説いた書は、近年珍しい。
●日経メディカル評(1998年5月号)=先端技術に頼りがちな現代医療に警鐘を鳴らしている。経験豊富な医師でなければ語れない名言が随所に。医学を愛し、患者を全人的にとらえようとする著者の姿が強烈に伝わってくる。
●朝日メディカル評(1998年6月号)=謙虚に学びたい人生がここにある。
【読者の声】
■女性(37歳)=ひとの心と身体をみる医師の一人として、参考になるところ、驚くところが多くありました。なかなかこの手の本がないと思います。この本を見つけることができてよかったと思いました。
■女性(22歳)=とても良かったです。一生持っていたい、忘れずにいたい本の一冊になりました。
■男性(25歳)=とてもすばらしい本です。医者に必要な能力は失敗から学ぶことであるというのにはとても共感を覚えました。またこの高名な医師が、いかに症状を考察し克服していったかを学ぶことができ、とても感心しました。
【内容紹介】本書「訳者まえがき」より
ラウン博士は、ヒーリング・アート(癒しの芸術)としての医療を実践するために、ひとりひとりの患者の心に向き合う努力を重ねてきた。ここには、博士が医師として悩み、苦しみ、患者の死に打ちひしがれ、そして失敗をくり返すまいと、すさまじい情熱を傾けて医学研究に取り組んだ姿が赤裸々に描かれている。この中のさまざまなエピソードは、フィクションではないだけに深く胸に迫り、医療制度の問題にかぎらず、人生や家族の問題を考えさせられる。
博士は、多くの人々の生と死に立ち会い、自らの老化を見つめることによって、患者がよりよく生きるために医師に何ができるかを考察し、患者を癒すにはどうすればよいか、多くの教訓を実例をあげながら示している。私たちの多くは、身近な人々の病気や死を経験しているだろう。患者とともに常に前向きに生きようとする博士の姿を見れば、どういう状況でも、よりよく生きることができるという希望が持てる。これは、医療を志す人々だけでなく、すべての人々への応援歌である。
【内容紹介】本書「日本語版のための序文」より
アメリカ人の読者を対象にした医療に関する本が、日本でも意味を持つのはなぜだろうか。理由ははっきりしている。私たち人間は、民族的、国家的、人種的に異なり隔たっていても、表層的な違いや文化を越えて、互いに共通する部分がはるかに多い。人間として身体構造がほぼ同じというだけでなく、より深い意味で、私たちは出生、成長、加齢老化、死という共通の大きな問題に直面している。生活のストレスや存在の苦しみは共通のものだ。国や民族が異なっても、医学はそれを越えた人類共通の普遍性がある。医師たちは、日本人であれアメリカ人であれ、全世界共通の井戸から医学の経験という水を汲み上げ、ともに1つの学問にたずさわり、苦しみを和らげ命を育むという、同じ目的のために日々努力している。
本書は、アメリカよりも日本の方がさらに大きな意味を持つかもしれない。先進国では今世紀、医学の進歩によって平均寿命が25年以上延びた。中でも日本ほど平均寿命が著しく延びた国はない。日本の平均寿命は今や世界最高で、男性は76.4歳、女性は82.8歳となっている。老化とともに、精神的にも肉体的にも無残に衰えてゆき、医療の役割はますます重くなる。しかし、患者が多くの問題を抱えている高齢者医療においては、薬の処方もさることながら、患者の全人格に向き合うケアが何よりも必要となる。
中でも、医師は患者の話をよく聞く技を身につけなければならない。よく聞くためには、孤独の問題に対する洞察力が必要である。また、生活を不自由にしている多くの身体的な問題を理解し、わずかな鬱の兆しも敏感に察知し、老化とともにあらわれる多くの苦しみに共感する心を持たなければならない。しかし、アメリカの医療における現状を見れば、高齢者に対する思いやりが欠けており、医師に、聞く姿勢がないように思われる。おそらく日本でも同様の状況ではないだろうか。本書は、ますます深刻化する医療の危機的状況を示し、どの国でも普遍的な意味を持つ、多くの重要な教訓を書いたものである。
癒しに関しては種々の書物が著されているが、特に本書は、人生の主要な部分を医学の研究に捧げ、その多くが世界的に認められた臨床医が書いたものとして、研究者と臨床医としての両面から、ユニークで新たな視点を提供するものであり、広く読んでいただきたいと思う。
【主要目次】
▲▲第1章・患者の心の声を聞く
1.問診の科学と聞く芸術
2.触れて聞く
3.心と心臓
4.ミュンヒハウゼン症候群
▲▲第2章・癒しの医療を求めて
5.傷つける言葉
6.患者を癒す言葉
7.心の暗闇、言葉の光明
8.確信の力
9.驚くべき癒しの技術
10.癒しをむしばむ医療過誤
内容説明
本書の前半では、心臓病と心の問題を掘り下げ、問診の重要性と心のケアの大切さを訴えながら、テクノロジーに頼る現代医療を憂慮する。後半では、心臓学の最前線を切り開いた半生を書くとともに、生と死を見つめ、不治の病を抱えた患者に対する医療のあり方を提言している。
目次
1 患者の心の声を聞く(問診の科学と聞く芸術;触れて聞く;心と心臓;ミュンヒハウゼン症候群)
2 癒しの医療を求めて(傷つける言葉;患者を癒す言葉;心の暗闇、言葉の光明;確信の力;驚くべき癒しの技術;癒しをむしばむ医療過誤)