出版社内容情報
生物界における「レリック」(生きている化石)という観点から、人間社会や心の中を検討し、「社会の進化」「心の進化」を解き明かす。
【書評再録】
●信濃毎日新聞評(1998年5月24日)=豊富な話題をベースに、軽妙な文章で、しかしするどく、人間の意識の底にある「生きた化石」をえぐり出している。考えるべき材料や課題の提示が随所にあり、思考をやわらかくするのに役立つ。
●北海道新聞評(1998年6月23日)=非常にユニークな文明論集。
●日本経済新聞評(1998年3月22日)=カモノハシやシーラカンスの逸話から、ニューギニアのパプア民族の金歯や裸の習慣の解説までテーマは多彩。
【内容紹介】本書「はじめに」より
この地球上には、なんと多くの生物が生きていることであろう。その数は既知のものだけでも150万種以上、最近の推定では1000万~2000万種にもおよぶであろうといわれている。これらすべての生物は、みなそれぞれ長い時間をへた進化の道筋のなかであらわれ、現在にいたっている。
そのような生物界にあって「生きている化石」(レリック)と呼ばれている生き物がいる。過去には繁栄していたが、その後いろいろな原因で衰退し、現在もなお細々と生き残っている生き物のことである。かといって、今にも死に絶えてしまうといったものではなく現在も子孫を残しながら、生物界の一隅をしめて、その立派な構成員として生きているのである。
これらの生物が過去にはこの地球上で栄え、世界のどこにでも見かけられたふつうの生き物であったことは、世界各地から産出する化石の記録をとおして知ることができる。
このように現在の生物界は、今この世界各地で栄えている種類ばかりでなく、過去のいろいろな時代に栄えて、その当時の栄華をしのばせながら、なお生きながらえている数々の生き物もその仲間に加えたものからなっているのである。おかげで、私たちはこうした生き物を通じて、過去のある時代に栄えた生物について、化石よりももっと生々しくくわしい情報をえることができる。
いっぽう、生物界における「生きている化石」と似たような事柄は、生物界の一員であり、その生物界での長い進化の果てに出現した、私たち人間自身の中のいろいろな面にも見いだすことができる。
本書の第1章では、いろいろな地質時代にあらわれ、その時代を生き抜き、そして現代にも生きる数々の生き物のなかで「生きている化石」にあたる例をまず紹介することにしたい。
第2章では、世界各地に散見する先住民の生活を調べることによって、現代人の祖先が通過したであろう社会発展の歴史の一こまをうかがい知ることができるものである。これは現代の人間の共有する貴重な遺産であり、このような経歴を経ることなく、現代人の今日はなかったものであることを察知していただけるものと思う。
第3章は人間の「心」の中にある「生きている化石」である。それは心情の世界に属する事柄であり、母性愛のようなものもその一部であろう。世界の人の誰もが共通に感じるもの、あるいはアジア、日本といったところにだけ共通するもの、あるいはある時代に特有であったものなどいずれも、人類出現以来の「心の進化」に起因するものであることも理解していただけると思う。
このような、数々の例をみなさんに提示し、あらためて、ご自身の内なるもの、身近なものを見直してみる機会になれば、この上ない著者の喜びである。
【主要目次】
▲▲第1章・生き残った生物
雪男の正体/バイカル湖のアザラシ/メタセコイアの発見/カモノハシのすむ国/シーラカンスのうきぶくろ/生きている化石=レリック
▲▲第2章・昔の社会
思い出のパプア島/カンガルーの狩人/トナカイの民/ものいう道具・こわされない道具/ユーカラのなかのアイヌ
▲▲第3章・心のしがらみ
人間らしさ/本能の末裔/社会の細胞/神々の誕生/義理の親孝行
▲▲第4章・レリックの教え
生物のレリックに学ぶ/社会のレリックに対する反省/心のレリックとの闘い
内容説明
生物進化の視点から、社会・こころの進化を探る。
目次
1 生き残った生物(雪男の正体;バイカル湖のアザラシ;メタセコイアの発見 ほか)
2 昔の社会(思い出のパプア島;カンガルーの狩人;トナカイの民 ほか)
3 心のしがらみ(人間らしさ;本能の末裔;社会の細胞 ほか)4 レリックの教え(生物レリックに学ぶ;社会のレリックに対する反省;心のレリックとの闘い)