出版社内容情報
今、日本中の広葉樹林は再び太くなり、伐りはじめられている。
しかし、我々は本当の森の姿を知らない。
本来の日本の広葉樹林は、さまざまな樹種が混ざり合う多種共存の森だ。
時に針葉樹とも混ざり合う巨木の森だったのである。
広葉樹の森づくりでは、全層間伐と天然更新で地域固有の多様性をもつ巨木林をめざす。
樹木の寿命に合わせ、数百年にわたり利用しながら、年々大径化していく木々は、
数世代にわたり山里の人びとの暮らしを支えていくだろう。
森の恵みをていねいに引き出しながら、
森と山里を真の意味で豊かにする森づくりと林業のあり方を提案する。
【目次】
序章 森とどんな関係を築いていこうとするのか
板切れ一つが懐かしい
気づきはじめた人たち
持続しなければ
森に聴く
自然に倣い、木を伐りながら成熟させる
森のそばで生活する人たちを応援する
本書の構成
Ⅰ部 巨木の森――地球を救う
1章 原始の森の巨木たち――記録と記憶から
開拓時代の原始林――大径・通直・高密度の三拍子
江戸時代の禁伐林――庄屋の記録
遠野の古老が語る巨木林
アイヌの古老が語る原始の森
失われた原生林――戦中戦後の大伐採
【コラム1】伐る側の倫理
2章 今に残る老齢林――学術調査から
水辺林
落葉広葉樹林
針広混交林
驚くべき樹齢――丸太の年輪を読む
3章 巨木の森は地球を甦らせる――炭素貯留と吸収による気候変動の抑制
年老いても炭素を貯めている――大径木頼み
大径化する〝樹種〟が重要
大径化する樹種が少ないことの危うさ
Ⅱ部 多種共存の森――どのように創られ、どんな恩恵を与えてくれるのか
4章 菌類が創る森の姿――木々の空間分布と種多様性
空間スケールを絞り込む――地球規模から一本の木の周辺まで
木々を孤立させる病原菌――ウワミズザクラとミズキ
【コラム2】老木の下の病原菌は毒性が強い
【コラム3】テンやタヌキに頼る――果肉を消化し遠くへ運ぶ
木々を群れさせる外生菌根菌――コナラとブナ
【コラム4】外生菌根菌とアーバスキュラー菌根菌
群れるか、孤立するかは菌根タイプで決まる
外生菌根菌の驚くべき力――病原菌を防御し土壌の栄養環境を改善する
〝ジャンゼン―コンネル仮説〟を超えて
菌類の種特異性が種多様性をコントロールする――置き換わるか、居座るか
蓄積する菌類の効果
5章 樹種の優占度を決めるもの――菌根タイプ・種子重・最大直径
ECMタイプの樹種の方がAMタイプより優占する
種子が重い樹種ほど優占する
最大直径が大きい樹種ほど優占する
6章 種多様性の恵み――地球で永く生きていくために
種多様性の回復――スギ人工林を広葉樹との混交林にする
水が綺麗になる
生産力が増大する
【コラム5】検証が進む種多様性と生産力の関係
持続する生産力
洪水・渇水を抑制する
【コラム6】人工林を小面積皆伐し混交林に
せっかちな人がつくった人工林と森の時間を刻む混交林
Ⅲ部 自然に倣う林業――多種共存の巨木林を目指しながら木材を生産する
7章 全層間伐――良質な大径材生産を可能にする
1 幹を太らす
混み合うECMタイプの一斉林――間伐を待っている
全層間伐が最適――下層間伐は効果小、上層間伐は不合理
間伐率は40%を超えてはならない――林分全体の
内容説明
今、日本中の広葉樹林は再び太くなり、伐りはじめられている。しかし、我々は本当の森の姿を知らない。本来の日本の広葉樹林は、さまざまな樹種が混ざり合う多種共存の森だ。時に針葉樹とも混ざり合う巨木の森だったのである。広葉樹の森づくりでは全層間伐と天然更新で地域固有の多様性をもつ巨木林をめざす。樹木の寿命に合わせ、数百年にわたり利用しながら、年々大径化していく木々は、幾世代にもわたり山里の人びとの暮らしを支えていくだろう。森の恵みをていねいに引き出しながら、森と山里を真の意味で豊かにする森づくりと林業のあり方を提案する。
目次
森とどんな関係を築いていこうとするのか
1部 巨木の森―地球を救う(原始の森の巨木たち―記録と記憶から;今に残る老齢林―学術調査から;巨木の森は地球を甦らせる―炭素貯蓄と吸収による気候変動の抑制)
2部 多種共存の森―どのように創られ、どんな恩恵を与えてくれるのか(菌類が創る森の姿―木々の空間分布と種多様性;樹種の優占度を決めるもの―菌根タイプ・種子重・最大直径;種多様性の恵―地球で永く生きていくために)
3部 自然に倣う林業―多種共存の巨木林を目指しながら木材を生産する(全層間伐―良質な大径材生産を可能にする;群状間伐―大径化と種多様性を同時に目指す;水辺林は伐らない、植えない)
4部 森との約束―共に生きていく(木材の価値を決めるもの―森の恵みの大きさ;多様性そのものが優れたデザイン;クマとの共生への長い道のり―棲み分けるための根本的方策)
著者等紹介
清和研二[セイワケンジ]
1954年山形県櫛引村(現・鶴岡市)生まれ。北海道大学農学部卒業。北海道林業試験場研究員、東北大学大学院農学研究科教授を経て、名誉教授。落葉広葉樹の開花から種子散布・発芽、実生成長の仕組みなどの繁殖生態を研究。その後、森林の多種共存メカニズムの解明に取り組む。近年は、種多様性回復が生態系サービスを著しく向上させることを観察中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。