出版社内容情報
80パーセント以上の陸上植物は菌根菌という菌類(カビの仲間)と共生している。
菌根菌が土の中に張り巡らせた菌糸で集めたリンやミネラルを植物に渡し、
植物が光合成で作ったカーボンを菌に渡すというパートナーシップは、
植物が陸上進出した4億5000万年前から続いていると考えられている
しかしこの関係は、自分に利益をもたらさない相手には容赦なく制裁を加えたり、
相手をだますことで「寄生」したりするシビアさももっているのだ。
次々に版を重ねている『菌根の世界』につづき、
菌と植物のきってもきれない関係を気鋭の研究者12名が
全10章とコラムでさまざまな角度から描き出す。
内容説明
はるか昔、利害の一致によって結びついた植物と菌類。養分の受け渡しを行う菌根は、地球上でもっとも普遍的な共生の舞台となった。森林形成のカギとなる外生菌根菌ネットワーク、菌根菌と宿主樹木の共進化、新種の国産トリュフ、ツツジ科の生存を支えるエリコイド菌根菌、木材腐朽菌に寄生する菌従属栄養植物、共生を開始させるシグナル物質、アーバスキュラー菌根菌が形成する樹枝状体の崩壊など、気鋭の研究者12名がさまざまな角度から根菌の謎を解き明かす。
目次
序章 菌根とは何か(齋藤雅典)
第1章 木を育て、森をつくるキノコの力―菌根ネットワークと土に眠る胞子(奈良一秀)
第2章 地下に隠れた菌根性キノコ・トリュフを探る(木下晃彦)
第3章 エリコイド菌根の世界―ツツジ科で生まれた謎に満ちた共生関係(馬場隆士・広瀬大)
第4章 光合成をやめた不思議な植物「菌従属栄養植物」をめぐる冒険(末次健司)
第5章 菌根共生の鍵となる物質を探して―ストリゴラクトンの発見とその後の展開(秋山康紀)
第6章 根粒共生から菌根共生を探る(齋藤勝晴)
第7章 菌根の働きを見る―植物側から見てみると(小八重善裕)
第8章 ラン菌根の共生発芽を探る(久我ゆかり)
第9章 菌根菌ではないけれど植物ときってもきれない関係のDSE(成澤才彦)
著者等紹介
齋藤雅典[サイトウマサノリ]
1952年東京都生まれ。東京大学大学院農学系研究科を修了後、農林水産省・東北農業試験場、同・畜産草地研究所、農業環境技術研究所を経て、東北大学大学院農学研究科教授。2018年に定年退職、同・名誉教授。研究テーマは、アーバスキュラー菌根菌の生理・生態とその利用技術。農業生態系における土壌肥沃管理。農業活動に関わるライフサイクルアセスメントなど(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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