森林業―ドイツの森と日本林業 スギ・ヒノキの木材栽培業から、森のめぐみをていねいに引き出す総合森林業へ

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  • サイズ B6判/ページ数 328p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784806715375
  • NDC分類 652.34
  • Cコード C0061

出版社内容情報

半世紀以上にわたり、森林生態学、森林運営、国有林経営を研究し、ドイツでも教鞭をとった著者による日本林業回生論。半世紀以上にわたり、森林生態学、森林運営、国有林経営を研究し、ドイツでも教鞭をとった著者による日本林業回生論。
ロマン主義思想とともに発展し、今や一大産業へと成長し、世界をリードするドイツ森林運営の思想と、木材生産の実践、ドイツ最高の頭脳が集まる人材育成・林学教育を解説。
それを踏まえて、21世紀の日本社会にふさわしい、生産・流通の徹底的な情報化、乾燥、天然更新から焼畑林業までを提言する。

序章 日本林業とドイツ林業
1 ドイツ林業とは何か
2 「ドイツ」とはどこだ
3 ドイツにも山岳林がある
4 日独林業の本質的違い

第1部 ドイツ林業の個性
第1章 ロマン主義の申し子
1 《自然》と《弁証法》を発見したロマン主義
2 文化論なくして林業論なし

第2章 「ガイアー革命」
1 生態学的林学の成立
2 ガイアー林業思想の要諦
3 不定形で、多様で、小規模な森林こそ最良

第3章 多機能林業論
1 林業とは一つの森林から多機能の同時発揮
2 林業の社会性重視と主要産業化
3 「社会的市場経済」の熱情的な擁護者
4 多様な事物の多様なままでの総体把握

第4章 森林機能計画制度
1 ディーテリヒ多機能林業論の制度化
2 バイエルン森林機能計画制度の骨子
3 「利用機能」の発揮はどの森林でも

第5章 「フリースタイル林業」
1 林業における資本主義の限界性
2 森林の多様性・動態性ゆえの「フリースタイル林業」
3 「育林は森の心で」
4 《経済》と《公益性》と《森林美学》と《保健休養》の自同律

第6章 「フォルスト」と「ヴァルト」
1 かつて「フォルスト」は森林とは別概念だった
2 「木材窮乏」がもたらした「フォルスト」の意味変化
3 「林業」から「森林業」へ――森林利用の発達

第7章 「持続可能原則」の揺らぎ
1 「持続可能原則」は発想のコペルニクス的転換ではない
2 「ヘルシンキ総指針」

第8章 ミュンヘン・チューリヒ同盟  
1 スイス林業の大改革 
2 日本に輸入された「近自然的河川工法」 
3 アルプスの国・スイスにおける小私有林の意義 

第9章 北ドイツへの宣教  
1 「森林業」を題名にした「人間・森林系総論」 
2 遅れた北ドイツ林業制度

第10章 「照査法」
1 徹底した現実重視の単木施業
2 照査法を大成したギュルノとビヨレイ
3 日本はクヌッヒェルの提言に学べ

第11章 「恒続林思想」
1 プロイセンでも生まれたミュンヘン・チューリヒ流林業思想
2 「恒続林」とは何か
3 「恒続林施業」はアカマツ林に特化した施業ではない
4 「恒続林施業」と森林美学

第2部 ドイツ林業前史
第1章 かつて森は魔界だった
1 森は恐怖の暗黒空間
2 林業人・山村民は賤民だった

第2章 絶対主義の財政基盤
1 木材依存型体制
2 自己否定する重商主義

第3章 「木材窮乏」が生んだ「持続可能な林業」原則
1 苦肉の策の「保続原則」
2 劣悪なドイツ林業従事者
3 成果なき人材養成策

第4章 コッタによるターラント森林アカデミー創立
1 《林学古典派》--「ゲーテ時代」の人びと
2 近代的林学高等学府の創立
3 《ターラント林学》の特性

第5章 伐期齢問題
1 林業における「伐期齢」の意義
2 自然的伐期齢説
3 工芸的伐期齢説
4 材積収穫最大伐期齢説
5 貨幣粗収穫最大伐期齢説
6 森林純収穫最大伐期齢説
7 土地純収穫最大伐期齢説

第6章 ユーダイヒ──ターラント林学の大成者
1 ユーダイヒ森林経理学
2 日本林業のモデル

第7章 「ノルマールヴァルト」(法正林)とは
1 「ノルマールヴァルト」とは
2 理念型か達成目標か
3 現実の多様性を捨象してのみ措定できる法正林思想

第8章 ターラント林学の限界性
1 林業の思弁的規律
2 排除の論理
3 「マスト林業」──豚と共にある林業
4 ターラント林学は過渡期の林学

第9章 ドイツ林業の地域的多様性
1 目標林形の設定
2 生産目標の設定
3 西南ドイツ林業の問題性

第3部 ドイツ人にとって森とは何か
第1章 森と都市
1 森あってこその近代都市
2 かつてのミュンヘン
3 森の中の都市、都市の中の森
4 都市林の改造 
5 都市林の造成 

第2章 都市林こそが森林業の精華
1 人と?の母子が一緒にお散歩
2 都市こそが森林に最も多くを、しかも最も強く求める

第3章 森で憩い、楽しむ
1 大工業都市だからこそ「市中の山居」
2 「氷雨でも森へ行くッ」
3 「森の幼稚園」
4 「市中の田舎暮らし」──クラインガルテン
5 「ウアラウプ」(有給休暇)の第一の行き先

第4章 森のウアラウプ
1 道路
2 森林立入権
3 宿泊施設
4 食事
5 国有林の役割

第4部 最高の頭脳が集まる森林業の人材育成
第1章 医師は一時に一人を救い、森林官は同時に万人を救う
1 憧れの職業
2 ムルナウにて

第2章 林業従事者の職種と職務

第3章 高等森林官の職務と養成課程
1 高等森林官の職務
2 高等森林官の養成課程

第4章 上級林業技師の職務と養成課程
1 高度な人材を求める新事態
2 林業大学校の履修課程
3 上級林業技師の主たる職務

第5章 林業士の職務と養成課程
1 ドイツ林業士の質
2 林業士の養成課程
3 作業士学校の主要履修科目
4 国家試験と主たる就職先
5 さらなる進路

第5部 日本林業再興への処方箋
第1章 過去の栄華が現在の禍根
1 「吾ガ咎ハ常ニ吾ガ内ニアリ」
2 未曾有の活況に惑乱した戦後林業

第2章 《外材時代》への誤った対応
1 外材輸入解禁問題
2 《優良材》という獣道への逃避
3 いわゆる「将来木」について
4 枝打ちの危険性

第3章 間伐と枝打ちの生態学
1 森林は隙間だらけ
2 林分総葉量一定の法則
3 間伐するなら集約的な「定性収入間伐」を
4 列状間伐は?劣情間伐?
5 《上層枝打ち》もありうる

第4章 乾燥の重要性──ヨーロッパ材が吉野まで来る理由
1 木材の良さは乾燥材なればこそ
2 伐採の機械化、運材と貯木の陸上化が乾燥工程を省略した
3 無乾燥材の致命的欠陥

第5章 東濃檜物語
1 東濃檜はなぜ天下一の銘柄材になれたのか
2 東濃檜はあくまでも「製品銘柄」
3 東濃檜の教訓

第6章 「分裂せる市場」構造
1 「貧困の価格」か「価格の貧困」か
2 流通の「蛸壺」化による「一物多価」現象
3 「多種目少量」を「少種目一括」に《変圧》できない流通
4 「そんなに材は集まらない!」

第7章 秋田の国有林で見たこと
1 秋田杉問題
2 実際の国有林は《分国有林》
3 「ノン・キャリア」組の難点
4 広域販売こそが要諦
5 ドイツ高等森林官の高い移動性

第8章 「盗伐問題」と「違法伐採」
1 入会とは何か
2 「林野官民有区分」の目的と実態
3 『夜明け前』悲劇
4 「国体」VS.「入会」
5 「違法伐採」・「合法木材」問題私論

第9章 木材栽培業から森林業へ──日本林業の発達的回生
1 日本林業起死回生策要綱
2 日本でも天然更新は容易
3 「焼畑林業」再考
4 ?有害動物?の林産物化
5 農業モデル化の弊害
6 梶本式立木乾燥法を起点とする乾燥システム
7 楽に伸びる国産材需要
8 日本森林業の主要産業化
9 里山私論
10 担い手の集団と担い手の養成 

終章 「社会的市場経済」と森林業
1 「全ての国民に繁栄を」
2 なぜ「人間の顔を持つ資本主義」なのか
3 「社会的市場経済」に日本林業が学ぶもの
4 森林業は情報産業なのだ

あとがき──本書の思考様式的背景


村尾 行一[ムラオ コウイチ]
1934年、大連市に生まれる。
東京大学農学部卒業、同大学院農学系研究科博士課程修了、農学博士、ミュンヘン大学経済学部留学。
国有林・林業経営研究所研究員、京都大学農学部助手、東京大学農学部助手、ミュンヘン大学林学部客員講師、愛媛大学農学部教授を経て、現在愛媛大学客員教授。
著書に、単著『木材革命』(農山漁村文化協会)、編著『東濃檜物語』(都市文化社)、共著『これからの日本の森林づくり』(ナカニシヤ出版)がある。

内容説明

半世紀以上にわたり、森林生態学、森林運営、国有林経営を研究し、ドイツでも教鞭をとった著者による日本林業回生論。ロマン主義思想とともに発展し、今や一大産業へと成長し、世界をリードするドイツ森林運営の思想と、木材生産の実践、ドイツ最高の頭脳が集まる人材育成・林学教育を解説。それを踏まえて、21世紀の日本社会にふさわしい、生産・流通の徹底的な情報化、乾燥管理、天然更新から焼畑林業までを提言する。

目次

日本林業とドイツ林業
第1部 ドイツ林業の個性(ロマン主義の申し子;「ガイアー革命」 ほか)
第2部 ドイツ林業前史(かつて森は魔界だった;絶対主義の財政基盤 ほか)
第3部 ドイツ人にとって森とは何か(森と都市;都市林こそが森林業の精華 ほか)
第4部 最高の頭脳が集まる森林業の人材育成(医師は一時に一人を救い、森林官は同時に万人を救う;林業従事者の職種と職務 ほか)
第5部 日本林業再興への処方箋(過去の栄華が現在の禍根;“外材時代”への誤った対応 ほか)
「社会的市場経済」と森林業

著者等紹介

村尾行一[ムラオコウイチ]
1934年、大連市に生まれる。東京大学農学部卒業、同大学院農学系研究科博士課程修了、農学博士、ミュンヘン大学経済学部留学。国有林・林業経営研究所研究員、京都大学農学部助手、東京大学農学部助手、ミュンヘン大学林学部客員講師、愛媛大学農学部教授を経て、愛媛大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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YasuZo

0
ドイツ林業と日本の林業の大きな差は、一つは人材問題。ドイツは体系的な職業訓練いわゆるマイスター制度で養成され、国家資格試験を通る必要があるが、日本にはそれがない。次にドイツ人は森に対して非常に強い文化的繋がりがある。文学、音楽など多くの創作原動力となっている。そのため、森ありきの生き方をしていて、都市づくりも森の存在が無くては成立しないと言っても過言ではない。 すなわち、森林共に生きていくために文化的、社会的、経済的に持続可能なものでなければならない。根本的な考え方が異なる状況を強く感じた。2021/04/01

かっちゃん

0
コスト削減ばかりに躍起になるのはいかがなものか、担い手を増やす・育てるにはどうしたものか、これからの森林の売り出し方は・・・いろいろ考えさせられる。 前半はちょっと読むのがきつかったけど。2018/04/25

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