内容説明
イギリス古生物学の権威で保守的ダーウィン主義者であるホールステッド博士による、海外からは初めての「今西進化論」批判。今西錦司博士との会見記と英科学誌「Nature」で展開された今西進化論をめぐる論争を巻末に収録。
目次
1 今西を発見して
2 今西の進化論
3 クロポトキンやルィセンコの主張
4 今西の魅力
5 京都エリート―今西のこと
6 科学を大衆へ―井尻のこと
7 柴谷の転向
8 タテマエとホンネ
9 けれど答えはひとつもなかった
10 窓が開く
11 山に登る
12 京都エリートの応答
13 今西と語る
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
がんぞ
2
’88刊。ダーウィン進化理論の根幹である自然淘汰を否定し、『棲み分けによる種の分化』を説く今西進化論はなぜ日本の一般大衆(俺も)に支持者が多いのか。欧米人には(スターリン時代に思想的に正しい進化理論=環境決定説とされ、種子を寒冷にさらすと収穫が増すなど唱えたが失脚した)ルイセンコ学説の再来のようにしか見えないが?来日して関係者と面談するうちに、一見、個人主義に対して日本特有の集団主義を主張するかのような理論集団のうちに個人主義で個性豊かなキャラクター多数を擁する「京都グループ」という存在が見出される…2012/02/08
ぴょんpyon
0
伝統的なダーウィニストである著者が、日本に来て今西進化論(反ダーウィン的とも言われる)を学び、批判していく過程を綴った一冊。著者がまえがきで「これは(中略)私がひどく曲折した道程の角々で何を発見したかの記録(読み:クロニクル)にすぎない。」と述べている通り、本書は記録と言った方が良い。前半と後半では著者の考えが大きく変わっている点があるし、後で前述した内容の誤りを指摘される場面もあるからだ。ただ、そうした紆余曲折した道筋で辿っているからこそ、今西進化論、あるいは、今西錦司その人のことがよく分かるのだろう。2016/11/12