内容説明
麻酔科学者としての研究の傍ら因縁浅からぬ「事件」史料と遭遇。医学的側面の重要性を指摘発表。百年余を経てなお伝便・噂の流布を嘆き警鐘を鳴らす。
目次
1章 雪中行軍遭難事件前の第八師団第四旅団の雪中行軍(歩兵第五連隊の雪中行軍;歩兵第三十一連隊の雪中行軍;弘前に駐屯するその他の部隊の雪中行軍)
2章 『遭難始末』成立の経緯とその背景(後藤幾太郎の「歩兵第五聯隊雪中行軍ニ関スル衛生上ノ意見」;稿本「歩兵第五聯隊雪中遭難ニ関スル衛生調査報告」;稿本「歩兵第五聯隊雪中遭難ニ関スル衛生調査報告」と『遭難始末』の関係 ほか)
3章 研究の歩みとその批判(明治時代(一九〇二・二~一九一二・七)
大正時代(一九一二・八~一九二六・一二)
昭和時代前期(一九二七・一~一九四五・七) ほか)
4章 年次別研究史料・資料一覧
著者等紹介
松木明知[マツキアキトモ]
昭和14年(1939)弘前市に生れる。昭和40年(1965)弘前大学医学部卒業、大学院に入り麻酔科学を専攻、現在弘前大学医学部麻酔科学名誉教授。医学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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100名山
6
親子二代にわたり医者であり現在81歳の名誉教授が2007年に出版した本書です。著者は父親から高校生の時に第五聯隊の四肢を失った生還者に温泉で会った話など聞き育ち、医局に入局した後に生存者の治療に関する論文を見出したり、医療事故目撃して事故を未然に防ぐためには真実を極めることと本件に情熱を注いだようです。しかしながら矛先は当時の陸軍と著者から見て瑕疵のある他者が記した論文に向かい、少々残念です。山屋としては「リーダーは何をしていたか」と「生還と遭難死を分けたもの」が知りたかったのですが、2020/09/17
sendagi1130022
0
筆者の本業が麻酔科医であるためか、平易かつ簡潔な文体で秩序ある論考が進められているので、八甲田山雪中行軍遭難事件を「文学」でなく「歴史」として追うための資料として有用と思われる。ただし、そのぶん筆者の批判もかなり手厳しい。また、巻末には筆者が長年渉猟した参考文献一覧が、筆者の批評(これまた手厳しいのであるが)付きで掲載されており、自ら調査したい方々にも便宜となろう。2012/01/16