内容説明
新興俳句を象徴する鬼才の挫折感を秘めた自伝―「神戸」「続神戸」「俳愚伝」。合わせ俳論(評論・時評・鑑賞・作品評・随想・雑記)を収録。
目次
自伝(神戸;続「神戸」 ほか)
評論・時評(新興俳句の趨向について;難解派の人々 ほか)
鑑賞・作品評(誓子氏の三つの作品について;「蘆刈」の鑑賞 ほか)
随想・雑記(崖の下雑記;海辺雑記 ほか)
年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
36
「水枕ガバリと寒い海がある」「緑陰に三人の老婆わらへりき」「おそるべき君等の乳房夏来る」など、インパクト大な西東三鬼の俳句はいくつか知っていた。その自伝「神戸・続神戸」では、さまざまな国の方々と交流している日々。三鬼の視線は、戦中としては珍しく偏見のない冷静なもの。また、「京大俳句弾圧事件」についても、検挙された一人として、そのいきさつやら経過やら詳しいので、ふむふむと読み進む。京都府警の因縁のつけ方を知ると、今後また言論統制の時代が来たとき、地味な私も言いがかりをつけられそうだと懸念した。2019/08/03
やま
7
これぞ西東三鬼。自伝はかなり変。山口誓子だけでなくとも、眉に唾をつけたくなる。若手50人といっても飯田龍太や森澄雄あたりがいて昭和からこんなに離れた今では、へぇと思いながら読んだが、その評論は辛辣で的確。飯田龍太すらけちょんけちょんに表されている。随筆に出てくる俳句の大御所の仕草はユーモアがある。俳句について真剣に討議し、句作していたしあわせな時代だったんだろうな。 分厚くて読むのに時間がかかったが、機会を見つけて再読したい。2019/05/16