内容説明
袁枚は十八世紀中国の代表的文人で、裕福に、楽天的に、八十過ぎまで、のびのびと暮らした。詩はその日常をうたって滋味と諧謔に富む。この一種の詩日記に記された清朝中期の社会はのどかで平和だ。桃源郷のような田園風景もかいまみられる。英訳も参照しながら袁枚を日本語近代詩によみがえらせたのが本書である。
著者等紹介
平川祐弘[ヒラカワスケヒロ]
1931年東京生。1948年第一高等学校入学。1953年東京大学教養学科フランス文科卒業。1964年東京大学比較文学比較文化課程助手。東京大学名誉教授、大手前大学教授、MLA名誉会員
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感想・レビュー
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しずかな午後
7
清の文人・袁枚。詩と美食を愛し、若くして隠居した後は山荘「隋園」で多くの女性と書物に囲まれて過ごしたという。本書はそんな袁枚の詩を、英国の東洋学者・アーサー・ウェイリーの英訳とともに、ダンテの研究で著名な平川祐弘による現代語訳とともに味わう、稀有なる一冊。袁枚の詩は、その生涯から想像されるよりずっと落ち着いた、穏やかなものが多い。平川の言うように、前産業化時代の「日曜日の世紀」における「閑雅な生きる歓び」が感じられる。涼しい風を浴びながら、二日酔いのぼうっとした頭で読むと、とても幸福な気持ちになる。2024/07/24