感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内島菫
13
時間を前後に揺蕩いながら緩やかに連鎖する三篇の物語が収録されている。みないわゆる男女の機微を描いているが、若い情熱やデカダンスが過去に足を取られると夢と形が似てくることに気付かされる。最初の物語である表題作「マダム・プアズン」で、男が女に語る伊勢物語の有名な場面(女がさらわれるとき目にした草の露の輝きを白玉かとさらう男に尋ねる)に出てくる白玉のように、数珠繋ぎにされる短文が蹲った光を放つ。どの登場人物も洒落ていて器用に優雅に時に気ままに生きているようでいながら、過去に囚われ常に記憶の中を逍遥している。2020/06/08