内容説明
俳句形式に可能性、ありや、なきや。「なし」と答えて、敢えてその非可能性に挑戦し、希有なる光芒を放った高柳重信。その戦後俳句の珠玉の全句集。
目次
前略十年
前略十年・補遣(金魚玉;蓬髪・抄)
蕗子
伯爵領
罪囚植民地
蒙塵
遠耳父母
山海集
合本句集覚書
日本海軍
日本海軍・補遺
山川蝉夫句集
山川蝉夫句集補遺
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
misui
4
先鋭な方法意識といっても保守的な俳壇にいたからこそエポックたりえたんだろう。元軍国少年であって敗戦を経験したところにその因を探ってもいいかもしれない。晩年には軍国主義へのノスタルジーを匂わせながらも単語のしりとりだけで繋ぐことで句作を遊戯に変えるような試みが見られる。2019/05/27
Cell 44
1
読む前までは「身をそらす虹の/絶巓/処刑台」「たてがみを刈り/たてがみを刈る//愛撫の晩年」「沈丁花//殺されてきて/母が佇つ闇」などのイメージしかなかった。読んで「飛騨の/山門の/考へ杉の/みことかな」「まして/大和は/真昼も闇と/野史に言ふ」のイメージも重なり、さらに日本海軍・補遺の「霜月/北窓/同姓・射手座/残夢・無比」「東雲/目覚/名勝・浮橋/初期詩篇」などという恐ろしいまでの句を見てしまった。「一木/夢見る/川の流れの/秋の水」あたりから私の中の印象ががらりと変わった。硬質だが詩情が溢れている。2012/12/28
親橋白金(実は加藤國康)
1
パンク俳句。ハードコア俳句。「火を燃やし心さわげる真晝かな」「泣きじゃくる不思議なものをふところに」2007/09/23
abaoaquagga
0
改行のみならず、文字の高さや行間の取り方、時には記号までもを含めた幻想表現のミニマルな極地。俳句というフォーマットから一般に想起される日本的な伝統美をやすやすと超越した、どことも知れぬ異界の情景をひとつひとつ絵葉書に落とし込んだかのような魂攫いの句。「月光」旅館・失語の木馬・廢兵院・神聖󠄁薔薇王國……。蛇が頻出するのは幼年期の記憶(『山海集』内エッセイ「不思議な川」)によるものか。しりとりの要領で単語のみをひたすら連ねる後期作品『日本海軍補遺󠄁』も別方向に異彩を放つ。2024/08/15