内容説明
本書は、社会福祉理論を支える研究論文をまとめたものであり、広くは社会保障における所得保障にかかわる領域から、欧米の社会福祉政策の状況を論究することで、社会福祉の制度や政策とソーシャルワークとの関係に研究対象を広げている。21世紀に向けての社会福祉理論をいかに展開していくべきかについて、いくつかの仮説と課題提起を意図している。
目次
第1章 社会福祉原論の構造と性格―岡村・嶋田・孝橋理論の体系性からの考察
第2章 社会福祉理論における学問的基盤について
第3章 社会福祉とニード―ニード論再考
第4章 社会福祉における価値と倫理―歴史的経験と課題
第5章 我が国の社会福祉方法の系譜とソーシャルワークマネージメントの展望―ソーシャルワークの地域化の脈絡において
第6章 社会保障における所得保障の意義と限界
第7章 現代日本における生活最低限をめぐって
第8章 ソーシャルワークとソーシャルポリシー―保守党政権下英国におけるソーシャルワークの変貌
第9章 「男女共同参画社会」というビジョンと社会福祉システム―21世紀日本社会の政策課題
第10章 障害者・高齢者福祉における利用者のエンパワメントと権利擁護の原理
第11章 ブレア政権における英国の福祉政策―第三の道(The Third Way)とは何か
第12章 スウェーデンの家族―福祉政策のインパクト
第13章 博愛事業思想と中期フェミニズムの二面性―ドイツ型「ソーシャルワーク創出」への道
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
17
2000年初版。社会福祉における「理論」と「政策」とは何を意味するのか、社会福祉原論とは何なのかを考察した本です。そのなかでも印象深かったのは、松本英孝論文の岡村・真田理論の考察を通じて、岡村理論の主体性論も真田理論の三元構造論も両方大切だと論じていることや、岩田正美論文では社会福祉におけるニードとは何かが論じられ、ニードには抽象的次元で言葉として掲げることができても具体的次元で展開するうえで矛盾を抱えることが述べられているところです。また永岡正己論文の社会福祉のおける価値と倫理も大変興味深かったです。2015/11/05