内容説明
キュービスム創設に関わり運動開始直後にいち早くキュービスム論を発表したアルベール・グレーズは、本書で自らの理論を再考し、キュービスム絵画が辿った同時代史とその造形理論を詳らかにする。絵画、彫刻、建築などの造形作品から理論、批評の言説に至るまで、バウハウスをはじめ以後のモダニズム諸潮流に多大な影響を及ぼしたキュービスムの、貴重な歴史的記録。
目次
1 キュービスムの歴史(1928)付 図版
2 キュービスム、新しい形態意識―一般化のこころみ(1925)
著者等紹介
グレーズ,アルベール[グレーズ,アルベール] [Gleizes,Albert]
1881‐1953。フランス・パリ生まれの画家、理論家、著述家。1906年初めに色彩の単純化を追求し印象主義からキュービスムへ転向。1912年には、当時のキュービスム運動の代表者ジャック・ヴィヨンが主宰する「セクション・ドール」に所属。同年、キュービスム運動のマニフェストとも言える著書『キュービスムDu Cubisme』をジャン・メッツァンジェと共著で出版。その後アメリカ合衆国へ旅行し、宗教的な啓示を体験。宗教的関心から、伝統的なカトリック教義とキュービスムの理念との融合を目指す。1932年、『形態と歴史』を出版。ル・コルビュジエなど多くの芸術家に影響を与えた。後年はサン・レミに閑居し、1953年アヴィニョンにて歿す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
6
自身がキュビズム画家である著者は、その運動を角ばった立体の造形表現の段階、複数の観察位置からの対象の分解と再統合の段階、面の秩序が画面を支配する段階への変容を辿りつつ、ルネサンス以降静止空間に配置された自然の対象を再現してきた絵画を、空間も観察者も動的な世界の表現に転換する運動としてキュビズムを捉えた。本書は面の秩序の段階にルネサンス以前の装飾壁画とモチーフを見ながらその先に現代建築へ合流する方向を示す。キュビズム絵画が画面構成から建築構造に向かう傍では、ル・コルビュジエやグロピウスの建築が並走している。2025/04/14
キャラ
0
キュビスムの基本的な、分析と総合の考え方がわかる。著者は日本では有名な画家ではないが、鈍く輝く多面が鮮やかな一面を作りだす、絵画「収穫物の脱穀」が代名詞(『キュビスム芸術史』という本の表紙にあった気が)。1928年に本書が書かれたということは重要だ。デ・ステイルの機関誌が終わる。グロピウスとモホイがバウハウスから退き、マイヤー学長の元、合理的で、即物的な色が強くなった。シュルレアが隆盛を極め、国際的にキュビスムは広く知られながらも結果として相対化され始めている時期。著者は大きな転換点を感じていたのだろう。2025/03/14
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