感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
73
難解な作品で先に原文を読めば良かった・・・。己の芸術を目指す為に心洗われるような自然の中にいてもその美を掴めない芸術家。その原因を情に流されるからだと思い、情を超えた境地を求めるが、それは違うのでは?寧ろ、理論や美学で伽藍を作り上げるよりも生活や人とのやり取りを通してこそ、美は生まれるのでは?意に染まぬ結婚をし、想い人を諦めきれず、それでも自由になれないおなみがキュウイチを見送る刹那の狂気じみた振る舞い。彼女の姿に散々、引用されたエヴァレット・ミレイの『オフィリア』の姿が重なった時、思わず、溜息が溢れた。2019/05/16
Major
9
名著『The Three Cornered World』は、『草枕』の文字面に現れた芸術性を超えて、一歩踏み込んで、漱石の思想を汲みとり、その思想性をも(西欧世界でも深い了解ができるように)英語の文字で表現したものである。そのことについては、僕達読者は冒頭文を少し読むだけでも容易に了解できるであろう。 最近もう一つの英訳作品『kusamakura』が出版されたが、(本屋に『The Three・・・』の在庫を問い合わせたら、その最新の英訳本を店員さんに教えて頂いた。(10のコメントに続く)2017/08/24
荒野の狼
4
夏目漱石の草枕のAlan Turneyによる英訳。草枕は文語で、漢文の素養などが相当にないと内容の十分な理解はできないが、現在のところ現代語訳は出版されていない。このTurneyの訳は、英語ながら、漱石の日本語と並べて読むと、双方の理解が深まる。この英語版単独で読まれるより、漱石の日本語を、英語版の和訳として、比較しながら読みたい。単なる直訳ではなく、微妙な表現も汲み取って訳されており、訳者の日本語力には敬服する。2013/10/06