内容説明
托卵行動と子育ての放棄・押しつけは“進化”で説明できるのか?カッコウは托卵することで“親”という重荷を逃れ、普通の鳥より多くの卵を産む潜在的可能性を持つ。それは宿主がだまされやすいうちは一時的に得をするかもしれない。だが宿主が反撃すると、カッコウは結局だましのテクニックに複雑な手順が必要となる。詐欺の常習犯が最後はつかまって償いをさせられるように宿主の防衛は托卵の進化的成功を制限する。しかしそれでもカッコウは托卵を成功させ、いまも托卵を進化させている。
目次
巣の中のカッコウ―文学作品や観察記録の中に描かれているカッコウの托卵
カッコウはどのように卵を産むか―長い間の論争はエドガー・チャンスによって決着がつけられた
ウィッケン・フェン―著者の調査フィールド、ケンブリッジ近郊のウィッケン・フェン
春を告げる鳥―カッコウはどうやって托卵相手やそのタイミングを選ぶのか
カッコウのふりをする―宿主のヨシキリは人工の擬卵にだまされるか、それとも見破るか
卵をめぐる「軍拡競争」―擬卵を見破る能力の高い宿主に托卵したときほど、カッコウ卵は宿主の卵に似てくる
署名と偽物―宿主が卵に記す「署名」が巧妙になるとカッコウの卵も巧妙になり、宿主は「署名」を変える
さまざまな装いでのだまし―カッコウはタカに姿を似せることで宿主からの反撃を減少させ、宿主を混乱させる
奇妙で忌まわしい本能―孵化したカッコウの雛は丸裸で目も見えないが背中に宿主の卵を乗せて追い出す
餌ねだりのトリック―カッコウの雛はどのように宿主の気を引くか。驚きの「だましのテクニック」
宿主の選択―カッコウの「好みの宿主」が世代を越えて伝えられるしくみ
もつれ合った土手―多種多様な生き物が複雑な相互関係を保って生きている
減少するカッコウ―地球温暖化による托卵の時期の狂いと餌の減少が原因か?
変化する世界―カッコウが減少すれば宿主の行動も変化する。近年の宿主の行動に変化が生じている
著者等紹介
デイヴィス,ニック[デイヴィス,ニック] [Davies,Nick]
ケンブリッジ大学動物学教授、ペンブルック・カレッジ・フェロー。1976年~1979年オックスフォード大学動物学実験授業助手、1977年~1979年同大学ウォルフソン・カレッジのジュニア・リサーチ・フェロー。デイヴィスのカッコウ研究は、BBCラジオ、BBCフィルムなどで紹介されている。専門は動物の行動生態学。特に最近は、カッコウとその宿主との相互作用に焦点をあてて多方面から研究を行なっている。著書Cuckoos,Cowbirds and Other Cheats(Elsevier Science,2000)は、英国鳥類学協会(British Trust for Ornithology,BTO)とBritish Birds Magazineのベストブックに選ばれている
中村浩志[ナカムラヒロシ]
1947年長野県坂城町生まれ。信州大学の生態研究室に入り鳥に興味を持つ。1969年信州大学教育学部卒業。京都大学大学院でカワラヒワの研究を行ない、1977年理学研究科博士課程修了。理学博士。1980年信州大学教育学部助手、1992年同学部教授。動物生態学が専門で、1982年より20年間ほど千曲川でカッコウの托卵とその生態調査を実施。その他ライチョウ、カケス、ブッポウソウなど、様々な鳥の研究で世界的にも高い評価を受けている。2006年~2009年日本鳥学会会長。2015年より一般財団法人中村浩志国際鳥類研究所代表理事
永山淳子[ナガヤマアツコ]
1961年東京生まれ。図書館情報大学(現筑波大学図書館情報専門学群)卒業。オンライン検索サービス会社勤務の後、主として自然科学書の包括的な校正作業などに携わっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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