内容説明
年々ツキノワグマによる農業被害や人身事故が深刻化し、それに伴い駆除されるクマも増え続けている。一頭たりとも殺すなと言わないかわりに、一頭でも多く救いたい。人も助かりクマも助かる方法はないものか。考えに考え、クマが荒らし被害が出ている作物デントコーンを山裾の休耕地につくり、そこから里に降りるクマを食い止めるという活動―「クマの畑」プロジェクトを始めた。「これは餌付けだ」という批判を覚悟でクマ問題を世に問いただす。
目次
第1章 森を追われ里へ引き寄せられるクマ
第2章 ツキノワグマと棲処の森を守る会
第3章 クマをめぐる保護と対策の現状
第4章 「クマの畑」―天使のささやきか、悪魔の誘いか
第5章 クマを守ることは森を守ること
第6章 素人だけど自然保護、素人だから自然保護
著者等紹介
板垣悟[イタガキサトル]
1960年山形県鶴岡市生まれ。1978年山形県立鶴岡工業高等学校情報技術科卒業。1983年仙台市内の郵便局に転勤。1985年「ツキノワグマと棲処の森を守る会」発足。1996年カルカン・アワード賞。1997年「クマの畑」開始。第48回全国植樹祭緑化功労者顕彰(自然保護部門)。仙台市内に「手塚治虫図書室」を開設
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感想・レビュー
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Humbaba
8
自然の実りが豊かであり、森に充分な食べ物がある状況であれば、クマもわざわざ人里に降りてきて畑を荒らしたりはしない。森の環境が変わってしまい、食物がなくなったからこそ人里へと降りてくる。その時に駆除してしまえば、貴重な生命が失われることになってしまう。そうならないようにするために、クマが食べるための畑を作り、農家とクマ都の距離を遠ざける。2014/01/06
Bon Voyage
2
クマの観察会の方が書いている本でした。現在の日本でのクマに対する対策・駆除などが書かれておりました。くまもそうですが、シカ、カモシカといった動物も地方によっては害獣指定されていたり、様々な問題を孕んでいます。外来種問題に加えて、在来種の害獣問題。野生動物は問題だらけですね。そこを学ぶことはとても面白いです。 この本ではクマのための畑、つまり餌場ですね。餌場を設けることで、そこにクマを誘導しているようです。面白いことを考える人もいるなと思いました。2013/04/24
ごろつきねこ
2
今年もまた人里に降りてくるクマがニュースになっている。人を傷つけたり、やむを得ない場合の駆除は仕方ないとは思うが、きちんとした管理をせずに無闇矢鱈と殺処分していては、とりかえしのつかないことになる。作者の板垣さんは非常に判り易い文章とイラスト、写真でそのように述べている。そして本人も悩みながら作った「クマの畑」クマを餌付する、自然ではないその手段は、しかし「背に腹はかえられない」という状況を物語り、反対賛成両者の興味をひきさらなる問題提起をしている。不幸な動物達が、少しでも減ってくれたらいいなと心から思う2010/10/23
Uzundk
1
人間が土地を占有したらそこに動物が出てくるのも仕方が無い。その一部のリソースをクマのための緩衝地帯として利用することで、駆除するかしないかの短絡的な選択枝から逃れているのはとても良いことだと思う。鉢合わせたくはないがいて欲しい存在。2016/01/06
K
0
(2005,489.57)七ヶ宿2号!放射性物質飛散も、火山灰も、土石流も、自治体の境は関係がない。クマもそう。宮城県からあの峠を越えて(すごい峠です)山形県の高畠で死んだ話は、地理がわかるので、真に迫る。ただ、これは20年前の本。今、クマの害がこれほど問題になっている中、クマ目線の著者は、どんな活動をしているのか気になる。2024/09/07