内容説明
「改革」の陥穽を衝く。90年代の統治機構改革を経た日本政治は、有権者に新たな選択肢を提供できるのか。
目次
第1章 政党システムの制度化を考える
第2章 地方政治と自民党の分裂
第3章 自民党に見る中央地方関係の変化
第4章 統治機構改革後の地方政治再編成
第5章 模索する都道府県議会議員
第6章 地方政治へ向かう国会議員
第7章 政党ラベルと地方議員
第8章 新たな政党政治に向けて
著者等紹介
砂原庸介[スナハラヨウスケ]
神戸大学大学院法学研究科教授。1978年大阪府生まれ。2001年東京大学教養学部卒業。2003年東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻修士課程修了。2006年同専攻博士後期課程単位取得退学。2009年同大学院より、博士(学術)。大阪市立大学大学院法学研究科准教授、大阪大学大学院法学研究科准教授、神戸大学大学院法学研究科准教授、ブリティッシュコロンビア大学アジア研究所客員准教授を経て、2017年より現職。主著に『大阪』(中公新書、2012年、サントリー学芸賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バルジ
4
地方政治と中央政府の選挙制度の差をメインに、政治家が政党に依存する中央と属人的な地方の相剋を論じる。地方分権改革によって中央から相対的に自立した存在となった地方自治体の首長と政党のラベリングに依存しない地方議員の組み合わせは国政レベルでの政党間競争を阻害していく。むしろ知事や市長によって地域利益の最大化を図るテーマを掲げられ地方議員が参集した場合、利益で結びつく与党勢力に比べ普遍的テーマを掲げていた野党勢力が大きな打撃を蒙るというのは2021年の大阪で正に見られた光景であった。選挙制度の改革は必須だろう。2021/11/13
spanasu
3
二大政党制の制度化が進まない原因を、国政と地方の選挙制度の違いと、地方分権改革による知事・市長の権限拡大で説明する。普遍的なプログラムを掲げた民主党は、国政では優位であった都市部においても、定数の大きさゆえの多党化や、首長とのクライエンタリズムの構築の拒否、大阪維新の会や減税日本といった地方政党によって、分裂への力がかかる。強すぎる自民党の対策はもう制度改革しかないのかな?2020/08/16
toshiyk
2
民主党が政権交代後に目立った成果を挙げることなく分裂した原因を探った本。今回の選挙にブチ切れた人が頭を冷やすのに適しています。私のことですが。副題に「政党システムの変容」とあるように、誰が何をしたという属人的な話ではなく、55年以降の国政・地方政治における政治家・政党の行動様式をシステムとして捉えて時期ごとに特徴を抽出し、制度改革による変化を追う内容。制度改革への提言も、国政を中選挙区に戻せという保守的なものではなく、「比例制の導入による地方選挙制度の改革が急務。将来的には二元代表制の再検討も視野に」と。2017/10/24
hexia
1
二大政党制を目指した一連の選挙制度改革がなぜ頓死したのか。本書はこの原因を国政と地方の選挙制度の相違に着目して説明を試みている▼そもそも衆院は単数選出が主であり、地方は複数選出が多く、ここから選挙戦略の相違が始まる。加えて制度改革で首長の権限が強まり、政党ラベルより首長との繋がりを強調する戦略が有効になっていった。指摘されればそのとおりなのだが、定量的な分析によって明白に示されると主張の強度が違う▼「あとがき」が白眉であると感じるのだが、いまの私の能力ではうまく説明できない。今後も継続して学んでいきたい2020/12/30
obanyan
1
地方と国政レベルの制度の違いに着目し、両者に異なる政治的競争メカニズムが働いていることが二大政党制の確立を阻んだ、という仮説を検証していく。90年代の選挙制度改革により、国政レベルでは二大政党制を志向する小選挙区制が導入され、政党ラベルに基づく競争原理が働くようになった一方、地方の選挙制度は単記非以上式投票制度が温存されてしまい、仮に民主党のようにクライエンタリズムに依拠しない、普遍的なプログラムを掲げて政党の統合を図ったとしても、地方レベルでは個別的な利益誘導を掲げなくては選挙戦に勝てないというジレンマ2020/07/27
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