内容説明
パリに暮らす一人のおばあさんが、昔を振り返りながら、いまを語る。フランスで子供から大人まで読みつがれている絵本を女優・岸惠子が初めて翻訳。
著者等紹介
モルゲンステルヌ,スージー[モルゲンステルヌ,スージー][Morgenstern,Susie]
アメリカ生まれの作家・イラストレーター。60冊以上の児童・若者向け絵本・小説をフランス語で執筆。現在、大学で英語も教えている。ニース在住
ブロック,セルジュ[ブロック,セルジュ][Bloch,Serge]
1956年フランス生まれ。絵本作家。2007年ボローニャ・ラガッツィ賞をノンフィクション部門で受賞。ニューヨーク在住
岸惠子[キシケイコ]
横浜生まれ。女優。「亡命記」東南アジア映画祭で最優秀主演女優賞。「おとうと」ブルーリボン賞。毎日新聞コンクール主演女優賞。「かあちゃん」日本アカデミー主演女優賞。作家。「巴里の空はあかね雲」文芸大賞エッセイ賞。「ベラルーシの林檎」日本エッセイストクラブ賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
168
つい先日、お気に入りさんが読んでいたレビューを見てなつかしくなり本棚から引っ張り出してきての再読です。女優の岸恵子さん(といっても今の若い人はご存じないでしょうが)の訳によるものです。今は一人で暮らしていて時たま子供や孫たちと会うのですが、若い頃は戦争で苦労したことがつづられています。それでも今を一生懸命生きているおばあさんに同感を覚えました。2016/10/27
匠
159
ユダヤ人として辛い時代を生き抜いた、あるおばあさんのお話で進む絵本。日々の様々なことを愚痴ることなく全面的に受け入れ、感謝と優しさを持って明日を信じて淡々と生きる姿はせつなくも清々しい。暗黒の時代があったからこそ、そういう境地になれるのだろうし、同じ経験をしてもいまだ憎しみの消えない人もいることを考えれば、彼女の生き方考え方はとても素敵だ思う。そして歳を重ねていくことも楽しみになれる。作者は違うが『つみきのいえ』を思い出した。あちらは寡黙なおじいさんの過去が絵で雄弁に語られるが、こちらは意思表示が明確だ。2014/04/18
新地学@児童書病発動中
153
誰もが経験する老いを静謐なタッチで描いた物語。ユダヤ人のおばあさんが主人公で、ユダヤ人の人たちが第二次世界大戦中に受けた苦しみをさりげなく語っているところが心に響く。あのような苦しみを受けても、人間はそれを乗り越えて生きられることを、この小さな物語は示していると思う。ホロコーストを生き抜いた人だからこそ、老いを自然にユーモアを持って受け入れられるのかもしれない。物語に寄り添うような優しいタッチのイラストも良かった。2015/05/27
kanegon69@凍結中
145
フランスで子供から大人まで読みつがれている絵本。一人暮らしのおばあさんはもう年老いて沢山のことが出来なくなっている。重たいものは持てない、本ももう読めない、編物もできない、玉ねぎとニンニクの料理も食べられない。でも彼女はその老いをしかと受け止めている。「もう玉ねぎで泣かなくていいわ」。しわだらけの自分の顔に満足している。物忘れが激しくても「明日はきっとうまくいくわ」と。もう一度若くなってみたいか?の問いにためらうことなく「いいえ」という。老いを自然に受け入れる、自分の人生を受け入れるその考え方に感動する。2020/01/04
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
125
人生で一番難しい仕事は? 「何にもしないでいることよ」とおばあさんは答える。凄く分かる。もう一度若くなってみたいと思いませんか? 躊躇なく「いいえ」。これにもとても共感。パリのアパルトマンで独り暮らしのおばあちゃんの日常。若い時は苦労の連続だった。言葉も分からず、ナチスの影に怯えて過ごした。でも幸せな思い出もたくさんあった。そのしるしは目尻の周りの笑いじわ、歯を食いしばってできた口の周りのしわとして残っている。その顔を「美しい」と思える彼女はステキな人だ。翻訳は岸恵子さん。コンパクトだけどとても深い本。2016/01/24