内容説明
明響音楽大学4年の水沢裕一は、やる気も技術もないダメ音大生。なんとか就職も決まり、大晦日におこなわれる定期演奏会だけ乗りきれば卒業と思っていた。ところが、教授に「70年ぶりの『第九』演奏なのに、こんな演奏では、到底卒業はさせられない!」と言われてしまう。あせる卒業メンバーたち。そんなある晩、練習のために忍び込んだ取り壊し寸前の「旧音楽堂」で、奇跡的な演奏を体験する。それは戦争で亡くなったかつての音大生の幽霊のおかげだった。怖がるメンバーに、裕一は驚くべき提案をする。「…あのさ、定期演奏会で、取り憑いてもらうっていうのはどうかな?」第2回WOWOWシナリオ大賞優秀賞の脚本を小説化。
著者等紹介
坂口理子[サカグチリコ]
早稲田大学第一文学部演劇専修卒業。会社勤務を経て、現在フリーランスとして、テレビドラマ、映画等の映像脚本や、舞台脚本、および、小説等を執筆。2006年『おシャシャのシャン!』で創作テレビドラマ大賞・最優秀賞受賞。同年、『よいお年を…!』でテレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞・優秀賞受賞。2009年『フロイデ!―歓喜の歌でサヨナラを』で第二回WOWOWシナリオ大賞・優秀賞を受賞。2010年『風に聞け』第三十六回城戸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いずむ
25
冬が来ると、自然と耳にする歓喜の歌。風物詩になるに至るまでのエピソード、そこに遺された思いに触れて、姿勢を正す。歓び、祈り、願い。そのどれもが切実で、重い。『戦争』と『歓喜』。そこにある悪い冗談のような皮肉と、変えようのない過去に、その旋律は逆説的に、悲しみを奏でているようにも思えてくる。音楽で人は1つになれるのだろうか。天上に辿り着いた魂は、神の御下で1つになれるのだろうか。そんな、遠くに馳せる思いと、ボク自身の今年出会った沢山の歓びと、悲しみ。今年の『第九』は、ボクの中で、特別な意味を持つものになる。2012/12/09
のほほん@灯れ松明の火
17
読みやすい文章で、話の展開も想像通りに進んでいくので、ハラハラ、ドキドキは少ないものの安心して読めました。好きな事を思ったまま楽しむことが出来ない時代が確かにあったんだなぁと、選択する自由すらない時代があったんだということを改めて感じました。最近、少しバタバタしていて毎日を流れ作業の様に過ごしていたのですが、反省させられました。 第九を聴くたびにこういう気持ちを思い出せたらいいのですが…。2012/12/13
ソラ
5
【読了】D 正直、良くも悪くもよくあるテンプレ的な作品。脚本の小説化なので映像で見ればいいのかもしれないが、小説としては悪くはないけどよくあるストーリーだなと思ってしまった。2024/08/10
mizuha
5
数々ある「年末の第九」の起源。その一つをベースにした、ジェントルゴーストストーリー。重々しくなりがちな題材だけど、これは軽く流れるように進んでいく。元々が脚本なのだから、(キャラクターの魅力も含めて)映像の方が、しっかり良さが伝わるかもしれない。物足りなさも残るけど、読後感はとても良い。2013/05/21
まめチャン
5
オケが題材になってる話は今まで何冊か読んできたけど、オケと幽霊が絡んでくるような非現実的なものは初めてでした。 オケが話の中心というよりは、オケはあくまでも人と幽霊とを繋ぐ要素に過ぎないっていう感覚。でも!これは、時代も言語も違えどわかりあえるオケ(音楽)だからこそできる技・・・だと勝手に思った。 音楽描写も少なめなのでオケ経験なくてもすんなり読めそうな気がする。 これが脚本と小説の違いなんでしょうかね??いい話でした!2013/01/07
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