出版社内容情報
大正時代の博多。謎の人気作家・香月蓮と少年助手の春彦が人喰い化け物の噂と連続バラバラ事件の真相を追う耽美なホラーミステリー!
内容説明
時は大正十年。旧制中学に通う優等生・瀬戸春彦は編集者の父のお使いで、偏屈で有名な正体不明の大人気作家・香月蓮の原稿取りに行かされる。香月は春彦の歯に衣着せぬ物言いや年の割に達観した性格を気に入り、小説のネタ探しの助手にする。二人はさっそく町で噂になっている、託宣で人の死を予言するという歩き巫女の姉妹、人喰い化け物の仕業と噂される連続バラバラ殺人事件の真相を追いかける。だが、それは恐ろしくも底知れぬ闇への入口だった―。民俗学的な要素も満載、大正時代の博多を舞台に繰り広げられる耽美なホラーミステリ!
著者等紹介
嗣人[ツグヒト]
熊本県荒尾市出身。温泉県にある大学の文学部史学科を卒業。在学中は民俗学研究室に所属。2010年よりWeb上で夜行堂奇譚を執筆中。専業作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちょろこ
111
好みの世界観の一冊。舞台は大正10年の福岡。謎の人気作家の香月と小説のネタ探しを頼まれた助手の春彦が噂の人喰い化け物、連続バラバラ事件の真相を追う博多密着型ミステリは序盤から漂う好みの予感がたまらない。案の定、少し幻想的でほんのりホラーが絶妙。そしてやっぱりバディに魅せられた。香月と春彦はまさに出会うべくして出会った二人。お互いに通ずる辛苦な生い立ちと絆を深めていく過程の描き方の巧さ、事件の根底に流れる地元に伝わる負の歴史のせつなさ、哀しみに寄り添う二人の姿が、いいねの風を運んでくれた。続編賛成の読後感。2025/05/13
yukaring
67
福岡・博多を舞台に繰り広げられる大正浪漫あふれるオカルトミステリ。しっとりと耽美で幻想的な世界観は「夜行堂」を彷彿させる嗣人さんらしい1冊。変人の人気作家・香月蓮と金髪、白い肌を持ち鬼子として人々に忌み嫌われてきた少年・瀬戸春彦。この2人のデコボコバティが博多の街を跋扈する人喰いの化物と対峙をする。ほとんど屋敷から出ない謎多き作家・香月の元へ父の代理で原稿を取りに来た春彦。彼を気に入った香月は早速春彦を助手として町の噂を調査。人の死を予言する巫女とバラバラ殺人。明らかになる真相は闇深くそして切なかった。2025/04/22
がらくたどん
46
大正博多を舞台にした美貌の引籠り青年作家と利発過ぎてやや皮肉屋だが家族思いの少年助手の不思議綴り。遊郭周辺で頻発する男性の惨殺事件を取材の一環で追う内に死期を言い当てる歩き巫女の存在が浮かび上がる。明治と昭和を繋ぐ束の間の近代化の踊り場の灯から見捨てられた闇が濃度を増し、祟りの真相は哀しく祓うより鎮めたい。家族友人に愛されつつ己の出自(多分アルビノ)を呪いと卑下する少年が「なんらかの」引籠る訳があるらしい変人作家の手を引きながらむしろ背を押されるように成長する共助関係が暖かい。善きシリーズに育って欲しい♪2025/05/16
mihya
39
舞台は大正時代の博多。人気作家・香月蓮と出会い、助手に乞われた(旧制)中学生の春彦。不可解な事件に取材と称して首を突っ込む香月と毒舌少年のバディもの。2人とも訳あり。 怪異は悍ましくもあり切なくもあり、この時代の雰囲気も感じられて興味深い。 嗣人さんがまた面白いシリーズを始めたぞ!続きが楽しみ。2025/04/23
羊山羊
13
嗣人氏のバディもの大好き!今回は変人作家香月蓮と口の減らないショタ主人公瀬戸春彦とで、明治時代の九州で怪異退治!明治時代の遊郭がテーマゆえ、めちゃくちゃ陰惨になりそうと思ったけど、主人公コンビのかけ合いが面白くて、悲壮感はない。瀬戸春彦の毒舌やツッコミは特に爽快そのもので、ホラーサスペンスフルな展開を楽しめる。というか、嗣人氏のガッツリした長編って初めて読む。読んでいて短編ばっかりの人ではないんだなと、改めて感心しました。 2025/05/26