内容説明
内に秘めたる怪談魂がほとばしる、新たな世代の書き手・葛西俊和の初単著。とあるビルの警備員室に置かれてるのは…「御祓い箱」、解体跡から出てきた禍々しいモノ、それを…「解体業」、料理人が絶対に人に貸さない包丁の謎とは…「包丁の性格」など、生々しい現場での怪異の声が今ここに収録される!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
147
本書には身の毛もよだつ恐怖怪談だけではなく締めで心を癒やされる話も入っていて大満足でしたよ。気持ち悪い話の連続でもこういう風に最後に少しでもホッとさせてもらえるとありがたいなと思いますね。『包丁の性格』は料理人が絶対に貸さない包丁をついうっかり厨房に置いていたら他の人が使ってしまい、包丁には魂が宿っていて勝手に動き回って指を切断しようと暴れたという真にえげつない話。『雪降る夜』はクリスマスの夜に立ち寄った公園にいた奇妙な少女に導かれて行ったある家で育児放棄され衰弱した女の子が見つかって無事に助けられた話。2020/04/15
澤水月
27
りんご(農園)系、サンスケ人形など青森土着の話は非常に興味深かった。当たり前だが東北でも色々違うんだなぁ…これからはりんご怖いかも。人間椅子BGMに読みたい。保護室の動物、双眼鏡、眠り鳥が余韻ある。拾い物でした2015/12/30
田中
24
実話が37本収められている。どれもこれも気味の悪いものだった。介護職員が体験した老人ホーム内で起こった「兵隊さん」は劇話的である。入居者全員が霊体を同時に目撃している。それは食堂の片隅に立っているのだ。その霊体を視ていた一人の老人が激怒する。老人はその霊体と因縁があったのだろう。どこか切なさの漂う結末だった。「短期アルバイト」は、とても不可解な話だ。とある山村に連れて行かれた女性が供物を捧げに洞窟に行き、信じられないものを目撃する。忌まわしい風習が残る山里が今でもあるようだ【日本の夏は、やっぱり怪談】2025/08/28
とんぼ
11
「受け取り拒否」荷物ってある意味怖いな。「未明の着信」この全くわからないキモチワルさ。「サンスケ」土着の怪談って味があるよね。「解体業その弐」神様系にハズレなし。「回送電車」臨場感が半端ない。「けむり」供養をケチっちゃいかんね。「包丁の性格」蠱惑の刃物。すごい色気を感じるわ(笑)。「おまえはあっち」迷い込んだ系の話って好きだわ。「保護室のお客さん」ほっこりするけど、切ない話。「虫の知らせ」これ以上のぎゃー!はないでしょ…(ブルリ)。「雪降る夜」クリスマスってところがミソだよね。情景が美しい。2016/06/15
柊よつか
11
初めて読む書き手だが成程これは良書。奇をてらわない文体だが内容が定形に寄り過ぎることもなく、初めて怪談本を読んだ時のような新鮮さと懐かしさを感じた。特に印象的な話は、適切な判断が事故を未然に防いだであろう「受け取り拒否」、訳がわからず怖い「未明の着信」、山に棲むものは姿形を問わず恐ろしい「サンスケ」、あの音を脳内再生して迫り来る恐怖がつのる「回送電車」、集落のこういう話は大概怖い「短期アルバイト」、不思議で素敵でいいなあと思う「眠り鳥」、"助けたい"(或いは助かりたい)が"生きたい"を繋いだ「雪降る夜」。2016/04/19