内容説明
アメリカの大富豪ロス・ロックハートは、難病に冒された愛する妻の身体を凍結し、未来の医療に託そうと目論んでいた。プロジェクトに大金を投じる父に招かれ、中央アジアの地下研究施設を訪れた息子ジェフリーが見たものとは…?生か、死か、死のない死か―科学技術の進歩は肉体の復活と人類の更新、永遠への到達を約束しうるのか。そして愛は絶対零度の世界でも生き長らえるのか。極限状況において人間の限界を問う、異色の恋愛小説。
著者等紹介
デリーロ,ドン[デリーロ,ドン] [DeLillo,Don]
1936年、ニューヨークに生まれる。アメリカ合衆国を代表する小説家、劇作家の一人。1971年、『アメリカーナ』で小説家デビュー
日吉信貴[ヒヨシノブタカ]
1984年、愛知県に生まれる。現在、明治学院大学、東邦大学等非常勤講師(現代英語文学)。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
42
今までに読んだドン・デリーロ作品のなかでも随一の難解さ。しかし、最新テクノロジーと黙示思想が絡んだ形而上学的な問いかけが、「父と息子(あるいは母と息子)」という非常にミニマムな家族の物語に並置されるという構造はお馴染みのものである。抽象的で硬質な会話文には油断していると目が滑りそうになったが、読み終えた直後には否応なしに「この世界と未来」に向き合わざるを得ないような感覚に襲われた。厳かで、誤解を恐れずに言葉を選ぶなら、とてもロマンティックでもある。解説の通り過去作を読んでから手に取ることをお勧めしたい。2023/06/27
H2A
11
難儀で稀な読書。文章がとりわけ難解ということもないはずだが、途中でどこにいるのかわからなくなり行きつ戻りつしながらようやく読了。この読み難さは何だろう。大富豪の実業家ロスが不治の病におかされた妻を冷凍睡眠させて未来に託し、自らも後を追うというのが骨子だと思うが、戦争による虐殺と世界の終末のイメージが反芻され、登場人物の会話は抽象的(とくにチェリャビンスクの施設で出会うロスのプロジェクトに関わる人物たち)で明言もせず。「難儀」と言ったけどこの「迷宮感」は稀有なもの。2023/11/04
中海
3
シンプルに王道に「愛している人を冷凍保存する」社会。あほだなー。解凍する技術あんの? 蟹とか釣ってその場で冷凍するのはいいんだよ。解凍が大事なんだよ。あと、「その時の気持ち」。 「釣ったその場で料理して食べる」=健全な生存者のみの社会に対して、「いつでもお好きな時に解凍」って、解凍しないまま腐らせたり、冷凍した人が死んだり。ちょこっと考えればわかんじゃん。本編に漂う主人公の満たされない虚無感と、このあらすじとはいまいち関係ない。2024/02/03
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